* * *
レンと一緒に居て、今日で8日目。
ずっと山の中にいたせいか、レポートも片付けることができた。
捻挫の痛みもだんだんなくなってきて、これならいつ下山しても大丈夫そうだ。
とは思っても、なぜかここから離れられない。
朝早く起きて、広い庭の掃除して、ご飯食べて、風を感じて、また掃除して…。
毎日の規則正しい生活。
ゲームや漫画もないこの家でも、十分楽しむことができた。
それは、山の自然の見事さだけじゃなく、レンのせいだと確信していた。
くるくる変わる表情。
特に、キャッチボールしてやると凄く喜んで、いつまでたっても投げていた。
そんな楽しげな表情も、夜になれば変わってしまう。
寂しそうに遠い月を眺めるレンの横顔は、あまりにも頼りなくて。
このまま月明かりに溶けて消えてしまいそうだ。
「なぁ、レン…」
「…ん、なぁに?」
今ここにいる俺を見てほしくて、用事が無くても、つい何度も呼んでしまう。
そのたびに、レンの顔からは憂いは消えて、優しく微笑んでくれる。
レンに対する気持ちが、感謝だけじゃないと気づいたのは…もう、いつからだったんだろう。
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