「家デカイな。一人暮らし?」
「……うん、そうです」

さっきまでの慌て様から一辺、急に影が差した。
聞いちゃイケナイことだったか?
悪い事したかな…と思いつつも、その憂いに満ちた表情から、なぜか目が離せない。

「どうして? 家族は?」
「…れんらく、とっちゃいけない、から」

ぽつぽつと話すレンの目に、少しの涙が浮かんでる。
こんな、自然以外何もない山奥…一人で暮らしてて、寂しくないんだろうか。
まだ子供みたいだし、家族とも連絡取っちゃいけないって…どんな状況なんだろう。

「友達は?」
「………」

小さく首を振るだけで、返事はなかった。まぁ、こんなとこにいちゃ友達もできないか。
…いつからこいつは、独りなんだろう。

「ふーん… ワケアリなんだな、いろいろと」
「……は、はい」

滲んだ涙を拭いながら、沈黙してしまう。
この気まずい空気に押しつぶされてしまいそうになるのがイヤで、大学の話や好きな野球チームの話に話題を変えた。

すると、そいつは今まで暗かったくせに、面白そうに目を輝かせてずっと聞いていた。

時折小さく笑うその表情を、もっと引き出したくて…俺はカレーを3杯もおかわりしながら、レンとのお喋りに夢中になった。





* * *


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