「…すいません!」
「!!」


ビクッ!と全身で驚いたそいつは、俺を幽霊か何かでも見たような表情をしている。
まぁ、そうかもな。いきなり洞穴から人が出てきたんだから。

「あの、帰り道が分からなくなっちまって…。歩きまくって足腰も痛いし、良かったら…」

君の家で休ませてくれないか、って言おうとした所で、そいつは一目散にダッシュしてしまった。
突然のことに面食らったけど、みすみす見逃すわけにはいかない。

疲労の体に鞭を打ちながら追いかけた。
けど、この山に慣れてるのか、そいつとの距離はいとも簡単に広がっていく。

「クッソ…! …うわ!?」

そいつを追いかけるのに夢中で、足場が悪くなってる地面に気が付かなかった。
左足を捻り、よろけてそのまま崖に突っ込んでしまう。


寸前で踏ん張れる程、体の勢いは弱くない。

宙に投げ出された俺は、
冷静に「あ、終わったな」と思った―――




* * *


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