「…なぁ、覚えてる?」
「何を?」
「俺が、告白した時のこと」
「…忘れらんねーだろ、アレは」
●●Awkward memory●●●
夜、寝る前の浜田の部屋。
浜田が洗濯物を畳んでいる間、俺は手持無沙汰でベッドでボーッとしていた。
雑誌はもう読み終わったし、テレビ付けてもつまんないのばっかで即消し。無駄な電気代は、払わせたくないし。
今聞こえるのは、時計の秒針の音だけだ。
浜田の匂いが強く残る布団の上でごろごろしてると、ふいに浜田が 俺たちが付き合う事になった"あの時"の事を覚えてるかと聞いてきやがった。
そんな昔の話じゃないし、覚えてないわけないだろうと答えると、視線は洗濯物のままふっと笑った。
「急に何だよ。懐かしむぐらい時間経ってねーだろ」
「はは、そりゃそーだな」
枕の上に顔をぽすんと乗せたままツッこむと、「でも、何か懐かしくなったんだよなー」と言って、また笑った。
それはきっと、浜田が畳んでる洗濯物のせいだ。
俺があの時、「いい匂いがする」って言った、あのセリフ…その匂いで、思い出が手繰り寄せられたんだろうと思う。
最高にカッコ悪かった、浜田の泣き顔。
今思い出しても笑えてきて、ニヤニヤしてたらすぐに気付かれてしまった。
「笑うなよー、必死だったんだからー」
「必死すぎだっつーの」
クスクス笑ってると、洗濯物を畳み終えたようで。
寝転がる俺の隣に座り、浜田も笑みを浮かべながら頭をぽふぽふしてきた。
その優しい手つきに誘われるように、俺の頭にも"あの時"が蘇ってくる。
実はお互いに好きなんじゃないかと気にはなっていたものの…口に出す勇気がなかった、臆病な俺たちの姿が。
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