あの夜…メソメソする浜田の横で、俺はただ黙って座っていた。
浜田が落ち込んでる理由は、彼女と別れた事じゃないと思ってた。俺には、アイツが彼女を本当に好きだっていう風には、到底見えなかったから。

それに、浜田が俺を見る時は…いつも、何か言いたげな顔をしてた。たまに「何?」って聞いても、「何でもない」ってはぐらかすだけ。

今思えば、浜田はずっと気持ちを吐き出したかったのかもしれない。
俺がそうだったように。

「あの時の泉、カッコ良かったよなぁ〜」
「え、そう?」

「うん。泉って目力があるからさ、それに引き込まれちゃったよ。好きだって言っちゃったし」
「その後、『何で言わせるんだよ!』って責められたけどな」

浜田が、自分で自分を嫌っていたあの時。
俺は今までにないぐらい真剣に、浜田を見つめていたと思う。

それに気付いた浜田が、わざと目線を逸らしてたけど…俺は許さなかった。
グイッと左腕を引っ張り、無理やり視線を戻させて、浜田の心を見破るかのように瞳の奥を覗いた。

『俺に、言いたい事…ないか?』
『え…? …だから、ないって言ってんじゃん…』

『本当か? 本当に、言いたい事、ないか…?』
『……、泉…』

たじろぐ浜田だったけど、俺から視線を逸らせないでいるのは分かってた。
だから、浜田の左腕を強く掴んだまま、何度か問い詰めたんだったよな。俺も、いつになく必死だったなと思うと、笑えてくる。

『本当にないなら、もう1回だけしか聞かない。これが最後』
『……』

『俺に言いたい事…本当に、ないのか…?』
『……っ』

自分でも、声音が切羽詰ってたのは気付いてた。
きっと、腕を掴んでた手も震えてただろうと思う。

俺の真剣さが伝わったのかどうかは知らないけど…絞り出すように「好きだ」と言ってくれた。あの時の浜田の顔は、すっげぇ情けない顔してたな。


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