不幸ってのは、続いたりするもんだ。
まさかそれを、俺が身を以て証明してしまう事になるなんて…あの時は想像もしてなかった。

浜田に彼女が出来たと聞いた時は、耳元を殴られたような衝撃だったな。
中学卒業から、何となく疎遠になってたというか…たまには会って遊んだりしたけど、高校生になった浜田は、どこか遠く感じてて。

その距離を思い知るのが、なぜか嫌で…この知らせを聞いた時に、ようやくすべての合点がいった。
俺は、浜田の事が"そういう意味で"好きだったんだって事に。

しかも、留年するっていう事実まで隠されて。
彼女と留年、二つの衝撃事実を聞かされた時は、それこそ気絶するかと思ったな。

「泉だって、すげぇ真剣だったじゃんよー」
「瀬戸際だったからな、いろいろと」

今でも思う。
もし、あの時…俺の問いに、浜田が答えなかったら、今の俺たちはいなかったんじゃないか、って。

「でも、泉が言ってくんなかったら…どうだったんだろうな」
「……さぁな」

浜田も同じことを考えていたのか…頭を撫でる手が止まって、顔つきが少し強張った。
…この表情、俺が浜田に問いかけた時とどこか似てるな。

「『俺に言いたい事、ないか?』 …だったよな」
「よく覚えてるなー」

「はは、たぶん一生忘れないよ。このセリフも、泉の表情も」
「…お前も頑固だったよな。何回もしらばっくれて」

「そりゃ、いろいろ守りたいものがあったわけだし」
「守りたいもの?」

また手の動きが再開して、俺の右耳をくすぐるように触ってきた。
そのくすぐったい動きに少し笑うと、寝ていた俺を引っ張るようにして持ち上げられ、抱き着かれてしまう。

「泉に嫌われるのだけは、どうしても避けたかったの。分かるだろ?」
「…ふーん」

守りたいものは、俺との関係だったって事か。
それでも、浜田は俺に好きだと言ってくれた。関係性を壊してしまうっていう不安もたくさんあったんだろうけど…俺が、浜田に無理やり言わせたんだよな。

何だか少し申し訳なくて、甘えるようにくっついて擦り寄る浜田の頭を、今度は俺がぽふぽふする。
それに、浜田が嬉しそうに笑った。


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