* * *


「…田島!」
「よー、はないー…」

「どうしたんだよ、こんな時間に…」
「…ちょっとなー」

マンション前の壁に寄りかかっていた田島に声をかけると、やっぱり元気がないみたいだ。
しょんぼりしてるっていうか…口が少しだけ尖ってる所を見ると、納得いかない何かがあったんだろうな。

「…家、入る?」
「…んーん、入んない」

「えーと…じゃあ、歩く?」
「…うん」

河川敷にでも行くかと誘えば、肩を落としたまま ぽてぽてと着いてきた。
途中、何度か話し掛けたものの、曖昧な返事だけで終わってしまう。

これじゃ埒が明かねぇと思って、ただ黙って一緒に歩くことにした。
何度も車が通り過ぎて騒がしい中、俺たちは変に静かで。

どこか落ち着かないけど、まさか何も話さないで終わるって事はないよな。
話したいから、電話したんだろうし…。

田島から話し掛けて来るのを待とうと思っている内に、先に河川敷に着いて適当に座る。
夜の川は暗くて、電灯の明かりもあんまりない。

人や車の通りも少なくて、川を流れる水音だけが静かに響いていた。

田島も俺に倣って隣に座り、少しの沈黙の後…ようやく口を開いた。




* * *


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