* * *
さっきまでほのぼのな空気だったのに、いきなり雰囲気が変わっちゃった。
声は低めになって、色気出してきたような…何より、顔をもっと近づけられる。
20cmはあった距離が、10cmくらいになった。
背中に腕を回されて、頭を撫でられて甘い囁きが続く。
…水谷、勝ちに来てるな。
俺が恥ずかしがって目を逸らすのを見越してるんだ、たぶん。
頭でそう分かっていても、俺はどうしようも出来ずにただ固まってしまう。
どうにかして作戦から逃げようと思っても、俺の体のあちこちを撫でる優しい手つきに拘束されたみたいだ。
水谷の視線に囚われたまま、そのままウットリしてると…もっと顔が近づいて来た。
こんなに近いと、もう視線が合ってるのかどうかも怪しくなってくる。
距離はおよそ5p。
すぐそこで水谷の吐息も感じられて、俺の体が照れとドキドキで熱くなってきた。
「栄口、好きだよ…」
「……うん」
何とか返事するので精一杯だったんだけど…そこで、水谷の首が少し傾いた。
…あれ、もしかしてキスしようとしてる?
ゲームのこと、忘れちゃったのかな?
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