* * *
至近距離の大声は、素でビックリした。(…)
けど、赤くなっていろいろ聞いてくる沖を眺めてるのは、結構楽しかったりする。
俺は、ただ単純にキスしたいとは思ってたけど…こんなに考える事があるんだなって、変に感心しちまうな。
「まだ何かある?」
「えーと…その、顔の向きとか…」
「向き?」
「ちょっと横にした方がいいの? それとも、まっすぐ…?」
「じゃあ、まっすぐでいいよ。俺がちょい横にするから」
「わ、分かった… えーと…」
まだ何かあるのか、また考えてこんでる。
俺も少しは緊張してたんだけど、悩んでる沖を見てたらどうでも良くなってきていた。
早くしたい気持ちと、和んでる気持ちがごっちゃになってるな。
「それで?」
「……もう、ない、かも…」
ついに質問がなくなったみたいで、観念したかのように呟いた。
ドキドキしてるんだろう、少し震えてる背中を、ぽんぽんと叩いて落ち着かせようとする。すると、少しだけ ふぅと息を吐いていた。
「…じゃあ、そろそろ…」
「あ、待って! もっかい確認!」
「え?」
「呼吸は止めてて、顔はまっすぐで、時間は3秒くらいで…」
何かブツブツ言い出したと思ったら、どうやら復習しているらしい。
いや、この場合は予習って言うのか?
「…終わった?」
「う、うん…」
独り言が終わり、沈黙が流れる。
また沖の柔らかいほっぺたを撫でると、ギュッて目を閉じてくれた。
そんなに力入れて閉じなくてもいいのにな、と思いつつ。
撫でたついでに、少しだけ顔を上向きにして…
3秒間、息を止めた。
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