●●可愛いなぁ●●●
高校を卒業してから、直人さんは坊主だった髪を伸ばすようになった。
それは、俺が「伸ばしたのも見てみたい」って言ったからなんだけど、実際いつ言ったんだか覚えてない。
でも、直人さんはその何気ない一言を覚えてたみたいで、俺が覚えてなかったことに少しだけムクれてた。
元々童顔だったけど、更に幼くなったような…一言で言えば、もっと可愛くなってしまった。
「何じろじろ見てんだよ」
栄養科の大学へと進学した直人さんは、電卓を片手に栄養計算をしてる。レポートってヤツだ。
そんなの、俺がいない時にやればいいのに。まぁ、一緒に暮らしてんだけどさ。
俺がつい見入ってたら、ツンとしながらまたムクれた表情を見せた。そんな童顔でそんな表情ってのは、マジで反則。
「可愛いなぁ、って」
俺が見ていない間、直人さんのこの可愛さにやられる奴らはどれぐらいいるんだろう。
そう思うと、俺の独占欲が強く刺激された。
「はぁ? バッカじゃねぇの」
ペッと捨てるように言われたけど、すぐ赤くなる頬は誤魔化せていない。
はーぁ、マジで可愛いわ。
こんなん学校行かせて大丈夫か?
今度迎えに行った時に、
周りの奴らにけん制しに行かなきゃだな。
5年前も、5年後も。
この可愛いのは、
ずっと俺のモンなんだって。
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