●●データが足りない●●●


三橋ノート。
5年前に初めてデートした時から つけ続けている…まぁ、日記みたいなもんだ。

3年前からは、ノートからパソコンへ記録するようにしてる。
5年も続けばかなりの冊数になって、場所をとってしまうからな。

「あべ君、ごはん ですよー」
「ああ、サンキュー」

今日は三橋特製のカレー風ドリア。
チーズの焦げた匂いが鼻腔を擽り、それと同時に腹も一気に減った気がする。

テーブルの上に散らかってるものを片付け、麦茶を用意するべく立ち上がると、すでにお盆の上に用意して三橋がやってきた。

最近は特に思うけど、どんどん効率が良くなってるとような気がする。
以前までは、料理、食器、お茶…みたいに、いちいち往復して持ってきてたからな。
そりゃ普通だって思うけど、三橋にとっちゃエライ進歩なんだぜ。

「うまそ〜」
「へへへv 今日は、ちょっと ピリ辛、ですよー」

両手を合わせて「いただきます」と同時に言い、スプーンで掬って食べる。
アツアツで火傷しそうになるけど、すげぇウマイ。

「っちち…」

少し猫舌気味の三橋は、何度もふぅふぅしてから食べていて…それがまた可愛い。

今となっちゃ5年だけど、そんなに時間が経っているなんて驚きだな。
最初の印象なんて最悪だったわけだし。

あと何年先まで、一緒にいれるんだろう。
この可愛い笑顔の横に、俺はいつまで……

「…あべ君?」
「…ん?」

つい物思いに耽ってると、いつの間に移動したのか三橋が横に座っていた。
それにちょっとビックリしてると、俺の左腕をそっと抱きしめてきて。

「…ずっと、好き です」

にへへへと笑う三橋は、やっぱり最高に可愛くて。
ドキッと高鳴る胸は、可愛さにやられたのもだけど…俺の心を読まれたようで、何か悔しい。


侮れないヤツだな。
行動が予測できないなんて。


まだまだ、データが足りない。


もっと、一緒にいないとな。



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