●●俺に移せばいいじゃん●●●


「だいじょぶか〜?」
「来るなっつってんだろ…」

掠れた声でゴホゴホしてんのは、風邪をひいちゃった花井。ドアから顔だけ覗かせると、怒ったようにして睨んできやがった。

「何だよー、心配してんのにぃー」
「心配が心配なんだっつの…。いいから、リビングに戻れ」

しっしって、蚊でも追い払うみたいにして布団に潜っちまった。何だよ、冷たいヤツ!

「病人ぶりやがって〜!」
「病人だっつーの!」

怒気を含み始めた言葉に、すごすごとリビングへ戻ることにした。…ん? イイコトを思いついちゃったぞ!

えーと、携帯携帯…。
さかえぐち〜、っと…!

「…あー、もしもし? おれ!」
『田島? どうしたの?』

「簡単に作れるお粥教えて!」
『お粥? …具合悪いの?』

「俺じゃなくて花井なんだけどさ〜」
『あー、そうなんだ。えっとねー…』

ご飯の余りに水を加えるだけっていう、マジで簡単なのを教えてもらって、電話を切った。これぐらいなら、俺にだって出来るはず!

「…よし!」

オマケに卵を流しいれて、醤油をちょっと垂らしてみた。味見〜、っと…うん、いい感じ!

お粥とお茶をお盆に乗せて、片足でドアを開けながら寝室へ入る。花井はまだ起きてたみたいで、俺が入るなり「コラ!」とか言いやがった。ふふん、そんなの言ってられんのも今のうちだぜ!

「ご飯ですよ〜v」
「は? …え? お前が?」

「そう! 俺が作りました!」
「…火傷してねーだろうな?」

「してねーって! はい、アーン…」
「ひ、一人で食えるっつの!」

感動したかと思えば、ガバッと起き上がってレンゲ取られちゃった。もー、いつまで経っても照れ屋さんなんだからなー!

「…食うから、出てけって」
「ええ〜?」

俺にうつさないように、って言いたいんだろ? でも、いっそ俺にうつせばいいじゃん。そしたら花井はラクになれんだし〜!
…なんて言ったらまた怒られるな、きっと!

「はいはい、出てきますよーっと」

お粥たちを置いて、部屋を出ようと立ち上がる。ノブを回そうと手をかけた所で、「…田島」ってちっちゃく名前を呼ばれて。

「んー?」
「…サンキューな。…そんだけ!」

ぷいっとしながら、お粥をふぅふぅしてる姿が可愛いな〜って思う!
最初から素直に言えばいいのにな〜!

「おう! 早く治してウマイの作ってくれよな〜v」
「…おー」


花井の風邪は移んなかったけど、

俺の愛は移ったのかも!v


な〜んちゃってv


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