●●瞳の中に僕がいる●●●
水谷と付き合って、もう5年。
学部は違うけど、同じ大学にも進むことができて…高校の頃の夢でもあった『同棲生活』ってのも、2年目になると慣れてきて、今では普通そのもの。
お互いにバイトしてるから、いつでも一緒ってわけじゃないけど…帰る所が一緒ってのだけで充分、シアワセだと思う。
「ねぇねぇ、こないだの映画録画してくれた?」
「したよー。あんだけしつこく言われればね」
「良かった〜v ありがと!」
「録画ぐらい出来るようになりなさいっての」
俺が作ったクリームシチューを、おいしそうに食べる水谷を見ながら、言葉はつれなくしても…頬はやっぱり緩んじゃうな。
「じゃあさ、お風呂入ったら一緒に見よう?」
「レポートは?」
「阿部に手伝ってもらった〜v」
「いつまで頼ってるんだか」
阿部も何だかんだで面倒見がいいからな。
ホント、高校時代と変わらないな、こういうとこは。
何でも「一緒に〜」って誘うところとかさ。
「…ふぅ、ごちそうさま! おいしかったよv」
「ありがとーv」
ご飯の食べ終わるスピードも、いつの間にか一緒になっていて。
それが、水谷との時間の絆みたいで…嬉しいなって思う。
「俺も一緒に洗う!」
「さんきゅー」
狭い台所に二人並んでしまえば、隙間なんてものもなく…必然的にくっつく感じなのも、またイイなって思ったり。
小さいシアワセなんだけどね。
「…ねー?」
「んー?」
「…ちゅーしよっか?」
「…は?」
「だめ?」
「…洗い終わってからじゃだめなの?」
「いま!」
「…しょうがないなぁ」
高校の頃より、結構伸びたよね、身長。
前はすぐキスできる距離だったけど、今はちょっとかがんでもらわないといけないもんね。
身長の差は少しだけ広がったけど、あの時と一緒なのは、そう。
君の瞳の中に、僕がいる。
***
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