●●光●●●
「さみー…」
深夜独特の寒さに縮こまりながら文句を言うのは、5年前から一緒に居る叶。
真冬の寒空の下にいれば、当然寒い。俺かて寒いし。でも「ちょっと散歩しようぜ」って言うたん叶やで?
「コーヒー飲むか?」
「ん〜? …ココアがいい」
公園の前を通りかかり、自販機の前で冷えた小銭を取り出す。チャリチャリと投入しながら、叶はさっさとベンチへと座りに行きよった。ちょんと座る姿も可愛らしなぁ…。
「ほれ」
「さんきゅー」
ココアって振るんやったっけ?
何か一生懸命上下に振ってんねんけど…炭酸やないしええか。
「さっぶいな〜。雪降るかなぁ?」
「降らないだろ。雲ないし」
俺もコーヒーを飲みながら空を見上げると、確かに雲ひとつない夜空。寒さのせいか、星が突き抜けて綺麗に瞬いてる。
ふぅふぅと冷ましながらココアを飲む叶は、5年前と比べて清廉になった。髪もあの頃より短くしとるし、声も落ち着いてきて…。
「何見てんだよ」
「あ、見てた?」
「ばーか。…さみーから帰ろうぜ」
「はいはい」
飲み終わった缶をゴミ箱へ投げ入れ、また並んで歩き出す。こんな寒い中に散歩を提案してきたんは…こうして、手を繋いで歩きたい為なんやろ?
「叶の手ぇ冷たいわ〜v」
「うるせー、湯たんぽ男」
ぶちぶちと言葉では文句を言いながら、顔はしっかり笑顔でらっしゃいます、この可愛い子は。
「眩しすぎるわ…」
ボソッと呟いた言葉は、叶の耳には届かなかったようで、白い息を吐きながら楽しそうに歩いとる。
叶は気づいてへんな。
5年前と変わらずに、
俺にとって 叶は、
星なんかよりもずっと輝く
強い 光 だってコトに。
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