▽ 3*
「じゃあほら、こっちこい」
彰吾が自身の膝上をぽんと叩いて誘導すると、さらに困った顔になる。でも腕を引いてやれば、華奢な体は簡単に捕らえることが出来た。
「あの……?」
葵はそのまま押し倒されることを覚悟していたようだ。何もされず、ただ腕の中にすっぽりと収められたことを不思議がるように、遠慮がちな視線が向けられる。その後ろを振り返る仕草によって鼻先を甘い香りがくすぐってきた。
「あぁ、ダメだな。この匂い嗅ぐとヤりたくなる」
初めからそんなつもりだったわけではない。ただ葵ともう少し過ごしてみたいと思っただけ。それなのに、彰吾の身体は行為と結びつけて覚えてしまったようだ。この香りを感じるほどの距離にいるときはいつも彼を抱いていたのだから、無理もないのかもしれない。
攫われた時点で犯されることを覚悟していた葵の様子も、彰吾の衝動を後押しする。ベルトに手を掛けても、抵抗は見せない。ただこれから始まる時間を予期して、小さく息を吐き出すだけ。
ジメジメと蒸し暑い天気にも関わらず、きっちり着込んでいた詰襟を脱がせることはしない。完全に肌を晒させれば、さすがに歯止めが効かなくなりそうだからだ。葵を朝礼までに教室に戻すことが叶わなくなる。
「朝、親父とヤッた?」
確認すると、葵は否定するように首を振った。父親の痕跡が色濃く残っていない葵を抱けることをいつもなら喜ぶところだが、今朝は事情がちがう。父親が抱いていれば、馴らす手間が省けたのにと残念に感じてしまう。
スラックスの中に忍ばせた手で蕾を弄れば、やはりそこは慎ましやかに閉ざされている。時間があるとはいえ、一から解してやるほどの余裕はない。彰吾は悩んだ末、葵と体を繋げることは諦めた。でも何もせず帰すつもりはない。
週末で飢えきった体は、葵の香りにも体温にも馬鹿正直に煽られていた。
「……んッ……緒方、さん?」
首筋を啄み、乾いた窄まりをなぞり続けると、葵からは意図を探るように名を呼ばれる。その声もまた、痺れるような感覚を引き起こさせる。
下着ごとスラックスを膝までずり下ろせば、陽の光など浴びたことのなさそうなほど白い太腿が剥き出しになった。この肌を見るたびに噛みつきたくて仕方ない気分にさせられる。
「筋肉ねぇからかな?柔らかいよな」
内腿に手を這わせて揉み込むと、葵はくすぐったそうに身を捩った。いつも彼の脚を割り開く時に感じていたことだった。
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