▽ 4*
「ぁ……、あぁ…っ」
肩口や鎖骨を啄んだあと向かうのはいつも胸元だったが、今馨が唇を這わせるのは柔らかな二の腕だ。
普段あまり触れられることのない場所への愛撫は単純な快感とは言えないようだ。薄い皮膚に舌を這わせるたびに、馨の体を挟むように開かせた両膝がもどかしげに震える。
手の甲や指先まで、右腕の全てがきちんと石鹸の甘い香りで包まれているのを確かめると、反対の腕も同じように愛でてやる。
もちろん、両の脚もそう。太腿は指でも唇でも可愛がることが多いが、膝下に触れる機会は多くはない。靴下を履かせてやるときにキスしてやることがある程度。だから刺激には不慣れだったのだろう。
「んっ、ふ……ぁっ、んん──っ」
小さな指の一つ一つを口に含んで揉みくちゃにした後、おまけとばかりに足裏を舌で撫であげれば、悲鳴のような嬌声があがった。足首を掴んでいなければ、宙を蹴り上げていたであろうほど強い反応も見せた。
「ここをくすぐられてイっちゃう人もいるんだって。くすぐったさと快感は紙一重だから。葵もそうなれるかな?」
これ以上、快楽に弱く、抗えない身体になるのが怖いのか、馨の問い掛けに葵は嫌がる素振りを見せた。震えにも見えるほど小さく首を横に振り、怯えた目を向けてくる。
「胸もお尻も、最初は気持ちよくなかったでしょう?同じことだよ。大丈夫、葵ならきっと全部悦くなる」
葵の不安をわざと取り違えてみせれば、ますます震えがひどくなった。
「ほら、ここももう」
「……んっ、ぅ」
すでに兆しはあると分からせるために、下着越しに膨らみをなぞれば葵の腰がソファの上で跳ねた。身体中に触れたとはいえ、葵が簡単に泣き出す場所には一切手を付けていなかった。にも関わらず、そこはしっかりと布を押し上げて主張し始めている。
「あっ、ん……、あぁっ」
「すぐ染みになっちゃうね」
特に敏感な先端は、布を挟んでいるとはいえ、爪でカリカリと引っ掻いてやればじんわりと蜜が滲んでくる。指摘されて恥じらう姿も馨を満足させた。いくら穢したとて、葵は綺麗なまま。
「ソープの香りだけじゃなくて、いやらしい匂いもしてる」
下着をゆっくり下ろして露わにした箇所に口付けてからかえば、葵の頬はますます赤く染まった。
「朝は出させてあげなかったから、辛かったでしょう?」
一昨日のようにリボンで戒めることはしなかったが、代わりに抱く間中ずっと指で根元を押さえ込んでいた。後ろを貫かれて達しはしていたが、熱を吐き出せないのは苦しかったはずだ。
葵が悪いわけではなく、柾への苛立ちをぶつけてしまっただけ。だから今はこうして詫びるように葵を甘やかす愛撫を与えてやっている。
両脚を掴んでもう少し高く腰を上げさせると、今朝少し強引に割り開いた蕾が眼前に晒された。傷ついてはいないが、普段より紅く色づいてはいる。
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