―――ほらっまたみてる

丹波さんと街を歩いているとき彼は必ず綺麗なお姉さんに釘付けになる。そりゃあ女の私からみてもついついガン見してしまう程美しいのはわかるけど、丹波さんはいつも急に立ち止まるから繋いでいた手が離れてしまうのはちょっと寂しい。それに―――

「丹波さんの巨乳ずきー」

私以外に誰もいない玄関で思いの丈をぶちまけた。そんなにボインがいいのか、大きければいいのか。丹波さんが釘付けになる人はきまってナイスボデーで綺麗なお姉さんなのだ。それこそ、私とは正反対の。

「大丈夫、男はみんな巨乳ずきだよ。」

先日のガミさんとの会話を思いだす。そのあとガミさんによって巨乳とはにかについてのレクチャーを延々と受けたが正直よく覚えていない。

玄関にへたりこんだまま改めて自分の体をまじまじとみてみると………

「うん………普通」

自分でいってみてかなり傷ついた。近頃大学生になって丹波さんに見合う大人に近づいたとおもったらそうではないらしい、これから丹波さん好みにぐんぐん成長する……………予定。
そんなことをぼんやり考えていると

「おいっどうしたんだよ急に」
ドンドンと玄関の扉を叩く音と珍しく丹波さんの焦ったような声が聞こえた。

「―っ丹波さんなんてあのお姉さんの谷間で溺れちゃえばいいんだっ」

そうだ、彼女を放っておいてボンキュッボンのお姉さんなんかを眺めてる丹波さんなんて……思い出したらまた悲しくなってじわりと涙がうかんできた。丹波さんが選んでくれた水着、頑張って試着したのに、彼はこっちを見向きもせず違う方を向いて似合うぞなんていっていた。
「っとりあえず中に入れて」

軽くヒステリックな私をこのままだとらちがあかないと丹波さんは悟ったらしく焦ったようにそう提案した。私は黙ってその提案を受け入れる。お店を飛び出してからここまでおいかけてくれたことが少しだけ嬉しかったのと近所迷惑にはなりたくなかったから。

玄関の扉を開けるとほっとしたような表情を浮かべた丹波さんが立っていた。よくみると試合が終わった後の様に全身に汗をかいていて、その姿に少しの罪悪感をおぼえる。

「いきなりどうしたんだよ」

丹波さんと視線を合わせない様にそっぽを向いている私に対して彼は困ったように眉を下げて玄関に入ってきた。

「丹波さんはどうして私なんかと付き合ってるんですか。」―――っ丹波さんが息を呑む音が、聞こえた。

「私なんか丹波さんに釣り合うような綺麗な大人の女じゃないしいつもわがままを言って困らせちゃうしそれに……」

次の台詞をいい淀んでいると背中に丹波さんの腕がまわって丹波さんのたくましい胸に抱きしめられる、まだほんのり汗をかいている丹波さんの暖さで包まれた。私の頭に顎を乗せて「それで?」と丹波さんは言葉の続きを促す。

「―――っ丹波さん好みの体じゃなくてこどもっぽいからてっ手をだしてくれないし」

いってしまった、後半はもうやけくそになっていたけれどしばらく二人の間に沈黙が訪れる。その間破裂しそうな程早い心臓の音は静まりそうにない。


「…………俺なんかおじさんだしいつお前に呆れられるんじゃないかっていつも心配してた。」

ぽつり沈黙を破ったのは弱々しい丹波さんの声だった。えっ顔をあげようとするとぎゅっとまわされた腕に力をこめられて身動きがとれなくなってしまう。
「そのままで聞いて、お前と同じような歳のカップルをみるとさ羨ましくなってついつい見ちゃうんだよな」

それって………

「ボインのお姉さんをみてたんじゃないんだ……」

ぽつりと呟くとなんだよそれと少し怒ったような声が聞こえた。「今日だって俺堪えるの頑張ったんだぜ………その……水着可愛かったから。」

そうだったんだ、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちがごちゃまぜになってまわした腕に力を込めた。

「まあでも二人とも同じ気持ちだって分かったことだし………」
丹波さんの声がいままでの真剣なものからいつもの悪戯っ子のような調子にかわった、顔を上げると何かをたくらんでいるような満面の笑顔で視界がいっぱい広がる。

「ちょっ丹波さん」

そして腰にまわされていた腕がなぜだかいやらしく動きだした。

「さっきまで丹波さんが手だしてくれないーってべそかいてたのは誰かなー。」

「丹波さんのおじさんっ」

恥ずかし過ぎて精一杯の悪態をついたのに

「おじさんじゃありません丹波さんです。」

そういって楽しそうに笑いながら丹波さんはするりと服の下に手を侵入させた。抵抗しようとしてももう片方の腕でホールドされていて動けない。

「大切にしたかったから我慢してた。なのに勝手に俺が巨乳好きってことになってるし。」

笑いながら私の頭に小さいキスをおとす。

「でももう可愛いすぎて無理」
ゆでだこのようになった私は答のかわりに勇気を振り絞って丹波さんの頬にキスをした。




向日葵の見つめる先


ななかさんの素敵企画「こっち向いてマーメイド!」に提出させていただきました。
おそくなってすみませんんんんんんっ(スライディング土下座)ななかさんまだ………夏ですよね……セーフだったり……なんて甘いこといってすいません。
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