short story | ナノ


▽ 気持ち整理



さて、何を書き示そうか。
特に何も無いんだけれど。
ため息をひとつこぼした。
手渡されたソレを見ながら僕は悩む。

「あんたは少し言葉を整理しなさい」
そう母親に言われた。

僕は正直、話すことが苦手だ。
かと言って聞き上手でもない。

話上手な人は聞き上手だ。
又その逆も然。

という事を聞いたことがある。
なんだ、その通りじゃないか。
僕自身を見る限り理にかなっている。

母親に渡されたのは、何の変哲もないノート。
百均でも売っているようなソレだ。
違うのは表紙に“気持ち整理”と、
母親の字で書かれているだけだ。

「ネーミングセンスまんますぎるだろ」

思わずそう呟いた。

まぁ、あれだ。
僕は話すことが苦手すぎて、
うまく言葉を伝えられない。
自分の中でうまく言葉を纏められないまま、
勢いに任せて声に出してしまう。
そうやってたくさんの人を傷つけた。
そういうつもりじゃないのに、
訂正しようとするその言葉も同様に。

だから母親はノートに書いて、
言葉を、気持ちを整理しなさい。
と言いたいのだろう。

余計なお節介だ、と思うと同時に、
助かった、という気持ちもあった。
僕もそろそろ嫌気が差してきていたんだ。
ちょうど良かったと思えばいい。
ノートに書いて、まとめて、
気持ちを整理する練習をしていこう。

さて、何を書き示そうか。
特に何も無いんだけれど。
ため息をひとつ飲み込んだ。
手渡されたソレを見ながら僕は悩む。



〈 悩みながらも今伝えたい気持ちを言葉に 〉






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