short story | ナノ


▽ 雨が繋ぐ音




オレンジ色のイヤホンから流れる音。

君は不思議そうな顔をした。





悪魔。

僕だけが知っていて、
誰にも話したことがない、
そんな存在。

ある日、
これがいつの間にか、
僕が学校用として使っている鞄の中に入っていた。

きっと、
屋上でサボっているときに、潜り込んだのだろう。

でも、
こんな変なやつを、僕が追い出さないのは、
愛情とやらをこの悪魔に持ったから
だと思う。たぶん。

いや、分かんないけど。
うん。


まぁ、何だかんだこの悪魔は、
毎日僕の鞄の中に潜り込み、学校までついてくる。

本当は、家で大人しくしていてほしいんだが、
可愛いから許している。



今日も、いつものように鞄の中に潜り込み、
学校までついてきた。

そして、いつものように悪魔は何をするわけでもなく、
学校が終わるまで鞄の中で過していた。


学校が終わり、帰宅しようと思ったとき、
悪魔は僕に

公園に行きたい

と言った。


ちなみに、悪魔は言葉に出して言った訳ではない。

なぜか僕はこの悪魔の言いたいことを
理解することができる。

理由は知らない。


学校から帰宅し、
ベッドへダイブする。

すると悪魔がふわふわと近づいてきた。

・・・そういえば、公園へ行くんだっけか。

それを思い出した僕は、
制服からラフな格好に着替えるため、
クローゼットを開いた。

そして、数ある服の中から、
表地が黒で、フードの部分と裏地がオレンジの、
スウェットを選んだ。


悪魔曰く、
この服は悪魔のお気に入りの服なんだそうだ。

どうして?と悪魔に聞くと、
黒色が自分みたいだし、何よりオレンジが好きだから。
と返ってきた。

僕はオレンジが好きなのか、と思い
そのことに対してもどうして?と
悪魔に聞くと、
周りが暗い色ばかりだとネガティブになるから。
と返ってきた。

正直、僕は
悪魔もネガティブとか思うんだ・・・。
と思った。
が、これを言うと面倒臭くなりそうだから
言わないことにした。


そんなこんなで、
悪魔と公園へ行こうと外へ出ると、

雨が降っていた。

こんなにも天気がいいのに。

これは、あれだ、
狐の嫁入りだ。
天気雨だ。

しかし、これでは公園で遊べない。

そう思い、悪魔に目を向けると。



・・・すごく残念そうな顔をしている。
心なしか、目元が潤んでいる。
おい、泣くな。ほんとに。



そんな悪魔を見かね、
悪魔に散歩に行かないか?
と提案した。

どうせ、このまま家にいたって退屈だろう。
遊ぶ気満々だったのだから余計に。


嬉しそうな悪魔と共に、
僕は傘を持ち、家を出た。


僕は登下校の時や、歩いている時
いつも音楽を聴いている。

それを知っているのか、
悪魔が、音楽は聴かないの?
と僕に言った。

僕は少し考え、
悪魔に、今日は一緒に聴く?
と言った。

悪魔は、嬉しそうに頷き、
オレンジ色のイヤホンから流れる音がずっと知りたかった。
と言った。


そうか、
このイヤホンも悪魔の好きなオレンジ色だった。

僕は微笑み、
悪魔にイヤホンの片方を渡した。





こんな天気雨の日に
悪魔と出かけるのも悪くない。

僕はそう思った。











〈あ、雨が上がった〉







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