short story | ナノ


▽ Fireworks



夏の終わりに花火を見た。
少し歩けば見れる、地元の花火。
1時間くらいの規模で、
人の集まりはいい方だと思う。
そんな花火大会。

同じ時期に、
これより大きな花火大会が、
3つ離れた市でやってる。
だけど、
地元貢献だし。
なんて言って、
幼い頃からずっと毎年見てきた。

小学校までは家族と。
中学校からは友達と。
高校に入ってからは、
―――――あいつと。


さっき友達からメールが来て、
今日の花火大会はどうするの?
なんて、聞かれたけれど、
答えはもう、決まってて。

私は、
ごめんね。今年も一緒にいけないや。
て、返した。

そして、
そっか!
じゃあ、楽しんでね!
と返信が来た。
その返信を見て、
私はベッドに倒れ込んだ。


あと1時間後に始まるから、
浴衣を着る暇はない。
ていうか、
そもそも着ていく気なんて
初めからない。
地元だし、歩きづらいし、
着たって意味無い。
女子力なんていらないし。

そんな言い訳をして、
家を出る支度をする。

開始まで30分を切った。
けど、大丈夫。
今年になって穴場を見つけたからだ。
産まれてから18年も
この花火を見ていたのに、
知らなかった場所。
本当、今さらだ。

私は家を出て、その場所へ向かった。



着いてすぐに、
最初の一発が上がった。
そこから見る花火は、凄く綺麗で。
今まで見てきた花火なんか、
霞んじゃうくらい綺麗だった。

その綺麗な光は、
見ていた私の心に、
すっと入って溶けていった。



ずっと、
小学校から思ってた。
なんで、花火は儚いって
皆が言うんだろうな、って。


その理由が今、分かった。

打ち上げられて、
花が咲いて、
消えていく。


その僅か5秒を、
人は自らの一生に置き換えて見るのだ。

だから、儚い。



分かってしまった。
今の私には、
この景色が一番辛いものだと。
儚さの理由を知ってしまった、
今の私には。


なぜ、穴場を見つけてしまったのか。
ここには私しかいない。
周りは暗いから、私の姿も見えないだろう。
幸い近くは川だ。
前日に降った雨で水かさは増し、
川の流れが速い。
私の声など、その川の音で聞こえないだろう。

あぁ、良かった。
これで、




――――思いっきり泣ける。




1ヶ月前あいつが死んだ
今年も花火を見ようって
約束をした次の日だった
浴衣着てね
なんて言われて
一緒に新しい浴衣を買いに行った帰りだった

こうつうじこ
いんしゅうんてん

もう意味が分からなかった
どうしようもないのは
知っていたけれど
恨むしか無かった


でも
あいつが悲しむのは分かっていた

だから恨むのをやめた

あいつのために

あーあ
私って単純




約束をした花火大会。
あいつも見ているといいな。

傷は癒えていないけれど、
前を向いていこうと思えた。

それも、
この花火のおかげ。


ありがとう











〈儚いけれど〉

〈やっぱり綺麗だ。〉




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