Happy Birthday Levi 25/12/2019
02 夜が溶けてく
冬、夜の兵舎は冷える。
暗くなった廊下を洋燈で照らし進む。
毎日のように訪れるドアの前に立ち2回、コンコンとノックした。
「なまえです」
名前を言うと中から「入れ」と返事があったのでゆっくりと中に入る。
部屋の中では山積みになった書類と、恋人である私が来たと言うのに机に座り書類から目を離さないリヴァイの姿があった。
「まだ書類終わらない?」
「この時期量が多くてな」
「ふぅん…ね、終わるまで待ってるから今夜は一緒にいてもいい?」
私はソファーに腰かけながら聞いてみた。
あと数時間後に訪れる彼の誕生日を一番にお祝いしたい。
誕生日の日ぐらい両肩に背負っている荷物を降して、ただのリヴァイになって、一緒に眠り朝を迎えたい。
「あ?お前エルヴィンに頼まれた書類は終わったのか?」
「え、まだ…だけどあと少しだから」
「あいつも忙しいんだ。できるだけ早く終わらせてやれ」
「…はい」
「それにお前先週体調崩したばかりだろう。体調管理も兵士の務めだぞ」
「……はい」
元々結構喋るリヴァイは尚も書類から目を離さず淡々と話す。
分かっている、リヴァイが正論を言っていることぐらい。それでも私はリヴァイと居たい。だってリヴァイの誕生日は一年に一度しかこないから。
誕生日を一番に祝いたい、束の間の安らぎを一緒に感じたい、そう素直に思っていることを口に出して伝えればいいのに、どんどん胸が苦しくなる。
涙がじんわり滲む。
私の前にいるリヴァイは兵士長のリヴァイだ。仕事の邪魔をしちゃいけない、私も部下としてやるべき事がある。
「ごめんなさい…部屋戻るね」
声を出せば思ってた以上に声が震えていた。
涙もぽろりと落ちる。そのままリヴァイの顔を見ずに部屋を出た。
ーーー
なまえが部屋に来た。
この時期書類が多いためどうしてもキリのいいところまで仕上げたかった。
なまえの調子を聞いていると声を震わせ部屋を出て行ってしまった。
………俺が何をしたってんだ。
「エルヴィン、入るぞ」
人のことを言えねぇが、いつ寝ているのか分からねぇこいつの部屋へ書類を届けに来た。
「やぁ、リヴァイ。誕生日おめでとう。なまえと一緒じゃないのか?」
「…あ?」
「おいおい、まさか忘れてるのか?もう日付が変わった、12月25日、お前の誕生日だろう」
「チッ、今夜書類を届けるのはこれが最後だ」
バサリと書類の束を手渡し、足早に兵舎を歩く。
クソ、素直に言えばいいものの。
ーーー
「なまえ」
何かあれば必ずこいつは屋上で空を眺めている。
今回も例に漏れずこんなクソ寒い中星空を眺めていやがった。
「リヴァイ」
「………さっきは悪かった」
「ううん。私も…」
「……」
「……」
お互い見つめ合う。
言葉が、続かない。
代りに一歩踏み出しぎゅ、とリヴァイに抱きついた。
逞しい腕が私の背中にも回り安心する。
トクトクと心臓の音が聞こえる。
温かい。心が落ち着く。
今、私たち、同じ時間を生きている。
抱きしめる力を強くして伝える。
「あのね、」
リヴァイは怖い人なんかじゃない。真面目で不器用で仲間想いの優しい人。だから、死んでいった仲間のために自分だけが安心や幸せを感じることを望んでいないだろう。
そう思ったら、おめでとうや愛してるって伝える自信がなくなってしまった。
私の言葉を重荷にしたくなかったから。
それでも、それでも。
「私、死んだら星になるね。毎晩リヴァイが寂しくならないように一番光ってあげる」
「ハッ、何を急に言いやがる」
「…」
「お前は…ずっと俺の隣にいればいいだろうが」
「…ありがとう」
あなたの幸せを一番に想っている。
「冷えたね。部屋戻って紅茶飲もうよ」
「…たまにはミルクティーにするか?」
「わ!嬉しい!」
神様なんて信じていないけど、今日だけはぬくもりを2人で分かち合えることに感謝したい。
暗い夜でも月が、星が、安心して朝を迎えられるよう輝いていることに感謝したい。
そして夜が溶けて朝がきたら隣に愛する人がいることに感謝しよう。
世界は残酷だけど今日だけは許してほしい。
この先あなたが少しでも愛に触れることができればいいと祈ることを。
「リヴァイ、ありきたりな言葉しか言えないけどお誕生日おめでとう。リヴァイが生まれてきてくれて私幸せだよ。これから先、どんなことがあっても、変わらず愛してるからね」
冷えた唇が暖まるよう、ありったけの愛を込めて私はリヴァイにキスを贈った。
fin
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