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※リクオが夜と昼で別々に存在しています。
「お父さんって呼んでくれないか」
「………は?」
七夕と父と唐突すぎる鯉伴の頼みに齢5歳である夜は思いっきり眉を潜めて父を仰いだ。
隣で筆を握っていた昼も驚きでぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「頼む夜、父さんのお願い事叶えてくんねえか」
「何で今更」
「理由は別にないけど」
「じゃあイヤ」
「夜ーーーっ!」
再び筆を持ち短冊に向かった夜に鯉伴が背後からしがみついた。それを見て遊んでいると判断して瞳を輝かせた昼も筆を置いて正面から夜に抱きつく。
「ちょ、やめー!あちぃって離せっ!」
「なー頼むよ夜ぅ」
「何で呼ばなきゃなんねぇんだよ!親父は親父だろうが」
「親父ってオヤジみたいで嫌じゃねぇかい?」
「いやどーでもいいし。つか俺の短冊にオヤジって書くな」
「昼〜夜が冷てぇよ」
「お父さんなかないで」
夜に寄りかかりながら泣き真似をする鯉伴のほっぺを昼がよしよしと撫でて慰める。
ない。
「俺の代わりに昼がお父さんって呼んでるからいいじゃん」
「確かにそうだけどよ、俺はお前にも呼んでほしいんだよ〜」
「じゃあ、はい」
「ん?なんだ昼、この紙は」
「短冊だよ、これに書けばお願い事叶うよ」
「ああ、それで」
この双子が夜の縁側で作業していると聞いてやってきたのだが、なるほど今日は七夕だったようだ。庭には青田坊あたりが採ってきたのだろう小ぶりな笹竹が枝垂れ桜に立て掛けてある。
「ね、お父さんもこれに書けば叶うよ」
「そうだな、じゃあいっちょ書いてみようか。昼、筆貸してくれ」
「はーい」
「おい、いい加減どいてくれねーか親父」
「お前の髪の毛意外とさらっさらで気持ち良いんだな〜ほら、グリグリ〜♪」
「人の話聞けぇえええ!!顔をうずめるなぁあああ!!」
「きゃーっ!お父さんボクもー!」
こうして親子の仲良し(?)七夕飾りは始まった。
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