鯉伴の会話


「わっりぃ、助かったよ」

「貸し1つな」

「出世払いで」

「それ以上どう出世すんだよ。総大将」

「さぁてな、神サマにでもなるかね」

「ガンバレ」

「おめーもなるんだよ。」



くるくる、とあちこちで聞こえ微かな声が2人の会話を遮る。雨上がりの草むらはカエルのかっこうの集会所になっているようだ。

そんな梅雨の声音に耳を澄ませながら、瓜二つの男が2人、同時に杯を干す。
濡れたように光る艶やかな黒髪と、全てを見透かすような瞳も同じ。
違うのは髪型と瞳の色だけだ。



「けど黒田坊はお前がいなかったらムリだったな」



金色の瞳、結っていない髪をなびかせた片割れ。妖姿の鯉伴がクスリと笑って呟いた。



「あんたのカンのほうが畏れ入るね。確かにアイツ…黒田坊は強ぇ妖だ」



隣で蒼碧の瞳を光らせながら、低い位置で黒髪を束ねた人間時の鯉伴はまた杯を干した。

そして不意に何かを思い出したように、くくっと笑う。



「それにしても黒の戸惑いっぷりは面白かったな。真面目なヤツだとは思っちゃいたがあそこまで慌てるもんかねぇ」



「お前の押せ押せな詰め寄りに平気でいられる奴ぁいねぇよ」

 

「そうかい?俺は別に詰め寄ってるつもりはねぇんだがなぁ・・・それに」

 

 

 

すっと衣擦れの音がしてひやりと冷たい指が胸に直に触れる。人である彼の手はいつも冷い。細められた蒼碧の瞳も自然と水を連想させる。

 

 

「俺は人間だ」

 

「・・・・・、その動き」

 

「ん?」

 

「そこいらの妖怪だったら簡単にオトせる。いちいち動きがアヤシイんだよおめーは」

 

「そうかな」

 

「そーだよ。自分褒めんのも気が引けるがお前は間違いなく誘ってるようにしか見えねえ」

 

「なんだ、誘われてんのか?同一人物に」

「さてね」



曖昧に返答するも眼差しだけは相手をしっかりと捉えて離さない。妖怪の彼はやっぱりぬらりくらりと掴みどころがない。色気のある・・・というより色気しかない金色の瞳に、誘われているのは自分の方だなと人間の鯉伴は苦笑した。



「なんか、そこいらの妖怪やら女やらにはもったいねぇ奴だよなお前」

「なんでぇそりゃ。それじゃあオレはどいつと絡めばいいんだよ」

「俺と絡めばいい」



クスリ、と笑んだ人間の鯉伴は少し華奢な体をぐいと押し付けた。
2人の杯がぶつかって中の酒が激しくはねる。



「手前の事は手前が一番知ってる…ってやつかい」

「そんなとこだな。オレならねっとり絡んでやれるぜ」

「音が卑猥だな」

「オレはお前だもん」

「俺が卑猥って言いたいのかよ」

「わかってんじゃねぇか、妖怪のお前さんほどの変態はちょっと探したって……あ、親父がいるか」

「一緒にすんなよ。……で?」

「え?……ぅお!!」


残りの酒を一気にあおって杯を置くと、妖の鯉伴は人型の己の細い腰を思い切り引き寄せた。膝立ちになった彼の胸に唇を寄せたままふふっと笑う。



「ねっとり絡んでくれんだろ」

「お望みとあらば」

「つかの間の逢瀬だ。楽しませてくれよ」

「はっ……今まで楽しくなかった日なんかあったかよ」



強気に見下ろす蒼眼が既に期待の色を写しているのを確認して妖の鯉伴は、無いなと返答した。
こいつとの逢瀬が楽しくなかった日なんて無い。
人である自分には世話になりっぱなしで、お礼だと戯れに体を重ねたのが始まりだったが。



お互いが全てを知り尽くしているだけに、つかの間の逢瀬は相も変わらず楽しくてしかたない。



「また頼むぜ、人の俺」

「んっ……わかったから、はや、く」

「焦んなよ」



妖はくくっと喉を鳴らして、乾いた唇を人のそれにゆっくりと重ねた。



「おめーの詰め寄りは俺にはきかねぇしな」















やらかした(笑)
需要ないと分かりつつ俺得SS投下ですお粗末様でした。
妖×人ですがいつ逆転するか分かりません。とりあえず人間鯉伴さんは襲い受け!!!


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