リクオがぱちぱちと瞬く度に長いまつげから雫が零れる。

雨粒は鴆にかからないよう、手のひらで器用に防いでいた。




「義兄弟に礼なんていらねぇだろ」

「でも守ってくれた。昼のオレを身を挺して2度も守ってくれた」




結局びしょびしょだけどなとリクオが苦笑する。

本当に、2人ともびしょ濡れで何やってんだか。




「昼のオレがずいぶん甘えさせてもらったからお前も今はオレに甘えりゃいい……ただ」

「ただ?」

「今度はオレにもちゃんと案内してくれよ」




キョトンとして見上げる鴆からふいと目を逸らす。

そんなリクオの口が、昼のオレばっかりずりぃんだよ、と紡いだ。




「おめぇ、昼の自分に嫉妬かよ」

「悪いかよ」

「悪かねぇが、難儀なもんだな」

「お願いだよ鴆くん」




抑揚のない声でリクオが言った。




「今日だってボクを守ってくれたじゃない。頼りにしてるんだからね」

「昼の真似か?似てねぇな」

「そうか?結構自信あったんだけど」

「全然だな。もっと練習して……っくしゆんッ!!」

「おっと。こりゃのんびりしてらんねーな」リクオがそう言うなりぐんっとスピードが増して揺れが大きくなる。

さっきより強く抱いてくれている主の胸に鴆は頭を預けて、ゆっくりと目を閉じた。






この風邪が治ったらまたリクオと来よう。

きっと夜の池も、林も野原も昼とは違った美しさを放つだろう。

そしてもう穴に落ちることもない。

例え落ちたとしてもそのまま月見酒なんかに洒落込んで、あんな事もあったよななんて笑って話せる気がするんだ。

そん時はとっておきの場所も紹介してやるから。

またオレが守ってやるってのもいいな。

だけど今はもう少しお前の腕にこの身を預けさせてくれ。



頼れる義兄弟よ――







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