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だけどそれ以上あの音は聞こえてこない。
なんなのだろうあの音は。
なんとなくだけど呼ばれているような気がする。
よくわからないけど。
『……フフ』
今のは笑い声?
女の子のような高い声。
『ウフフ、……アハハ』
「誰?」
辺りを見渡しても長い廊下に私一人。
だけど笑い声とともに金色の髪がふわりと私の横を通り過ぎていった。
慌てて振り返れば、長い金髪の女の子が角を曲がって行くのが見えた。
女の子は曲がる時、こっちに笑いかけたように見えた。
『 』
口が勝手に動いて呟いた。
けどそれは音にはならなかった。ふと頭に浮かんで消えたみたいに。
でも誰かが私の耳元で囁いた気がして、それが勝手に口から出たみたいな、不思議な感覚。
そして気がついたら私は女の子を追いかけていた。
ふわふわとしている女の子はまるで幻を見ているようで。
でももう少しで女の子に手が届くというところで女の子は消えてしまった。
伸ばした手が空を切っただけ。
『そっちじゃないよ白ウサギ』
くすくすと笑う声は聞こえるのに姿は見えない。
『やっと見つけた』
とんっと前から衝撃がきた。
でも軽くて私は少しよろめいただけだった。
どうやら抱きつかれたらしく、しかもさっきまで追いかけていた女の子だ。
「会いたかった。探したんだよ、白ウサギ。私ね、ずっとあなたに会いたかったの」
泣きそうな声で言う女の子は、何故だろう……。
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