あまりにも真剣で、そんな黒ウサギ君を見て、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。


「それに僕らには見つけられないから」


切ない声音。切なく歪められた顔。
さっきの真剣だった顔とは違う。

だけどそれはすぐに消えて、黒ウサギ君は笑顔に戻っていた。


「さあ、お姉さん。アリスを探しにいこう」





道無き森の中を私達は進む。
でも来たばかりの私にはこの世界のことは何も知らないから、黒ウサギ君の後をただついて歩いてるだけ。


「なんで黒ウサギ君は白ウサギがわかったの?」


気になっていた事だ。
私は人間であって白ウサギじゃないけど、黒ウサギ君は『白ウサギを間違えない』と言った。
なんで白ウサギを見つける事が出来たのかな。


「なんでって、お姉さんが白ウサギだからだよ」

「私は白ウサギじゃないけどね。でも、だから私の家の近くにいたんだ」

「違うよ僕は……、あれ?」


黒ウサギ君は首をかしげた。
自分でも不思議そうな顔をしている。


「なんで僕はお姉さんが白ウサギってわかったんだろう」

「え?白ウサギの気配とかじゃないの?」

「わからないけど…。連れて来なきゃ思って、そしたらあそこにいたんだ」


本人も何故あそこにいたのかわからないらしく、まだ黒ウサギ君は首をひねっている。
本当になんなのだろう。


「散歩か?黒ウサギ」


急に声が聞こえてきて、私は辺りを見たけど誰もいない。
だけど黒ウサギ君は上を見上げていた。



 

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