よろしくね、という少年。黒ウサギ君はにっこりと笑った。
ああ、だから黒いウサギの耳が生えているのか。


「私はリナ」

「リナお姉さん、ようこそ僕らの世界へ」

「………え?」


黒ウサギ君からわけのわからない言葉を聞いたような…。


「どういうこと?」

「んー、どういうことと言われたらここはお姉さんがいた世界とは違うということ」


私がいた世界とは違う、ということはいわゆる異世界という事ですか?


「うそ!」

「うそじゃないよ」


頷く黒ウサギ君。え、私は異世界に来ちゃったの?
普通ありえない、でも私の目の前にいる黒ウサギ君も本当はありえないのにいる。

なら私は本当に異世界に?
あれ、なんだか急展開すぎて頭がついていかないぞ。

そんなパニック状態の私の腕を黒ウサギ君はとった。


「さあ、アリスを追いかけよう」


……アリス。
もし私が知っている話しなら、追いかけるほうがアリス。


「普通は逆じゃない」

「逆じゃないよ。アリスを追いかけるのは白ウサギ。だからアリスを追いかけなきゃお姉さん」


ぐいぐいと腕を引っ張る黒ウサギ君。
よくわからないが、どうやら『アリス』を追いかけくちゃいけないらしい。

でもなんで私が白ウサギ?


「私、初めてここに来たし、白ウサギなんて初めて言われたし。誰かと間違えてない?」

「僕らは白ウサギを間違えたりしないよ」


そう言った黒ウサギ君の目は真剣で笑っていない。



 

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