穴に入った瞬間、私達は落ちた。
がくんと身体が下がったと思ったら足場がなかったのだ。

足場がないという事は当然落ちるという事で。


「きゃあぁぁ!」


下は永遠に続くのじゃないかとさえ思うほどの暗闇。
もう見てられないし、私は目をつむってあの独特な感覚に耐える。

こ…、これは絶叫マシンより酷い!気持ち悪いを通り越して気が遠くなりそう。
というより私、死んじゃう。


「お姉さん」


気絶したらさぞかし楽なんだろうな…。
なんて考えてたらあの少年の声がした。

聞き間違いかな、と思ったらまた「お姉さん」って聞こえたから私はゆっくり目を開けてみた。

開けてみたら目の前には心配そうにこちらを覗く少年がいた。


「大丈夫?お姉さん」

「……微妙」


大丈夫かと言われれば大丈夫かもしれないけど、大丈夫じゃないかもしれない。気持ち悪い…。

そんな曖昧な私の返事だったのに、少年は笑みを浮かべた。

身体を起こしてみれば手には柔らかい感触。
さっきまで私達は落ちていたのに今いる場所は草が生い茂り、木々が青々とした葉をつけている。


さっきまで暗い穴の中を落ちていたのに今私達がいるのはどうやら森の中のようだ。


「ここは?」

「ここは碧海(あおみ)の森」

「あおみの、森?」


見渡せば確かに少年のいうようにここの木は碧くて綺麗だ。
まさに碧い海の中にいるような感じがする。


「そういえば、まだ僕の名前言ってなかったね。僕は黒ウサギ」



 

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