これから仕事を請けてくると言ったフィンシアに、俺もついて行くことにした。

一緒に中に入ろうとしたけど、フィンシアに『クオンを見ててくれ』と言われてしまい、なんだかお守りを押し付けられた気分。


クオン君は相変わらず無表情なのに、顔だけは世話しなく動かして辺りを見ている。
それを隣で観察をしてみる俺。

この子からは何かを感じるけど何かはわからない。
上手く隠してるみたいだけどね……。


だけどそれよりこの子の無表情さとこの行動が気になる。
この子は下を向いて歩くタイプかと思っていたけど、ちゃんと顔を上げて歩いていた。
というよりは上を向きすぎなような気がするけどね。


一緒に待つ中、俺達は無言。
だけどクオン君は近くの花をじっと見つめていたので、俺も覗いてみた。
なんだ、蝶か。
だけどクオン君は興味津々みたい。


「蝶がどうしたの?」

「…チョウ?これはチョウって、いうの?」

「そうだけど…」


クオン君が手を伸ばしたら蝶はひらひらと飛んで行ってしまった。
この子は…、蝶を知らない?

そんな疑問が頭に浮かんでいる俺を余所に、クオン君はさっき買った飴玉を取り出した。


「……いる?」


じっと見つめてるのをどう思ったのか、俺に飴の入っている袋を差し出してきた。


「ありがとう」


俺は飴を取り出し、頭を撫でた。
よくフィンシアがクオン君のことを撫でているのを見ていたから何となくなんだけどね。

だけどクオン君は固まってしまって、……もしかして。


「嫌だった?」

「………ううん。好き」


いつも無表情のクオン君なのに、その時は笑ったように見えたもんだから不覚にも俺はときめいてしまった。





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