6
走っていくクオンを二人は見送った。
飴玉は気に入ったらしく、フィンシアがもっといるかと聞いたら頷いた。
『あそこにお菓子屋があるから買ってくるといい。お金はこれを出せば大丈夫だろう』
『わかった』
『クオン君、いってらっしゃい』
手を振るウィングに、相変わらずの無表情のクオン。
だけど、手を振りかえすクオンの表情は少し緩かったからうれしいのだろう。
クオンの後ろ姿を見送っていたウィングの目がフィンシアに向いた。
その目は真剣な目つきに変わっていた。
「気づいたか」
「うん。あの子、普通じゃないね。何かの力を感じるよ」
「何かわかるか?」
「君にはわからないの?」
「俺は魔人だ。お前みたいに魔術師じゃないからな。こういうのは魔術でさぐったほうがいいんだろ?」
フィンシアは魔力を持った人間。
見た目は20歳ぐらいなのだが、もう50年、60年近く生きている魔人なのだ。
フィンシアは普通の人よりも身体能力が高い。それも魔人だからだ。
だが、魔術師ではないため魔術の方は苦手だったりする。
だからフィンシアは魔術師のウィングにクオンを見せた。
ウィングはフィンシアと同じく魔力を持った人間。
でもウィングは魔術師、魔力を操り使う者。
フィンシアは魔力を操るのが苦手なため、魔術を得意とするウィングの方が詳しい。
だから不思議な力を感じ、クオンを見せたのだ。
同じ魔力を持った者でも得意不得意があるようだ。
それにウィングも魔力を持っているため見た目は20歳ぐらいだが、フィンシアと同じぐらいの時を過ごしている。
知識は普通の人以上ある。
「何かを感じるけど…。どうもなんかなぁ」
そう呟き、ウィングは目を細めたのだった。
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