「で、お前はいつから子持ちになったんだ?」

「………だから違うって」


テーブルに座りったフィンシアはうんざりとした口調で返し、ため息をついた。
なんどこの質問をされた事か。


「こいつは連れだ」


フィンシアが隣にいるクオンの頭をガシガシと撫でた。
クオンはフィンシアの前に座る青年を見上げ、すぐに眼をテーブルに移してしまった。


「初めまして、俺はウィング・エトメイズっていうんだ。フィンシアとは長い付き合いで腐れ縁っていうのかな」


クオンはウィングを見て軽く頭を下げるだけで黙ったままだった。


「こいつはクオン」

「クオン君?」


そうウィングが聞き返せばコクンと縦に頷いた。


「そうか。ところでクオン君が握っているのは何だい?」


ウィングに聞かれ、クオンは握っていた物を見せた。


「飴玉?」

「リージェンからもらったんだ」

「あまり握ってると溶けちゃうよ。早く食べなきゃ」

「食べる?……これって食べ物?」

「あっ、しゃべった」

「ウィング」


少し強めの口調にウィングは悪いと苦笑いした。
さっきから頷くところしか見ていなかったから、しゃべれると思っていなかったのだろう。
つい驚きの声が出てしまったようだ。


「クオン君、袋の両端を持って引っ張ってみ?」


ウィングに言われた通りに袋を開けると、中から黄緑の飴玉が出てきた。
それをまじまじと見つめるクオンに微笑する。


「食べてみな?甘くて美味しいから。でも噛んじゃダメだよ、飴玉はなめる物だからね」


クオンは飴玉を手にとり、恐る恐る口に入れる。
口に入れた瞬間、甘い味が口に広がった。


「美味しい?」


微かに口元を和らげたクオンが頷いた。




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