「慣れてない?…そうか」


リージェンは深くは聞かず、頷くだけでその話しを終わらしてくれた。
フィンシアにとっては説明しなくて済むのでありがたい。


「で、今日は何を持ってきてくれたんだ?」

「これだ」


フィンシアは麻袋から何かを取り出した物をカウンターに置いた。

大きさは手の平に収まる程度で、色が紅く宝石にも見えるし石にも見える。
だが、その中には火が燃えているようにゆらゆらと輝いている。


「なんだ?炎か?」

「いや、竜の息吹を封じた石の欠けらだ。こんだけでも威力は強いはずだ」

「滅多に見れない物じゃないか!本物か?」

「この俺が言うんだ、間違いはない」

「まあ、魔力を持ったあんたが言うんじゃ間違いないな」


リージェンは石をまじまじと見つめ、隅々まで調べ終わるとペンを滑らせた。


「この値段でどうだ」


フィンシアの目の前に突き出された紙に書かれたのを確かめると、フィンシアはそれを破いた。


「あっ!何しやがる」

「欠けらって言ったって竜の息吹だぞ?こんな金額じゃダメだ」

「…じゃあこれでどうだ」

「あと2上げろ」

「1だ」

「2」

「1!」

「こっちは生活がかかってんだ」

「それはこっちも同じだぁ!」


二人の言い争いはしばらく続き、結局リージェンが折れる形で決着がついた。
カウンターにはぐったりと肩を落としたリージェンとご機嫌に金を受け取るフィンシア。


「クオン、行くぞ」


クオンは頷くとフィンシアに駆け寄った。


「お、チビ」


リージェンに呼ばれクオンは振り返った。


「ほら、これやるよ」


ぽとりとクオンの手に落とされたのは飴玉だった。
くしゃり、と頭をなでられ、クオンはリージェンを見上げた。
リージェンはにかっと歯を見せながら笑って言った。


「また来いよ」



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