でかい拾いモノをした。物じゃなくて『者』だ。
しかも拾ったのは小さな子供なもんだから、手がかかるんだろうなとか思っていたのに…。

そいつは無表情であまり…、というより全く笑わないし表情なんてちっとも変わらない。
なんともまぁ、人間にあるはずの『感情』というものがなんにもない。


たぶん、この拾い者はそういうモノを一切知らずに育ったんだろう。
だってこの子供は俺に『外って何?』と言った。


外を知らない?んじゃ今までどこにいたんだ?って聞いたら『暗い所』だと。

まさかと思ったけど本当に何も知らなかった。
外がなんなのか、光とは、草とはとか。
言葉は喋れるみたいだけど、それ以外は何も。








「フィン」


振り向けば拾ってしまった子供。
俺もだいぶやる気がない奴だと言われてたが…、この子は俺より上をいく無だ。無表情。

今もじっと見つめてくるが表情は無表情。
だけど何か言いたげな目をしている、気がする。


「なんだ、クオン。どした?」


そう聞けばクオンは指をさした。
そのゆき先はパン屋。
クオンはお腹を押さえながら見つめている。
………もしかして。


「お腹すいたのか?」

「………たぶん」


少し考える仕種を見せたあと、クオンは頷いた。
まだ『お腹がすく』という感覚に慣れてないみたいだな。

今までどんな生活をしていたんだか。


「パン…、パン屋」

「そう」

「……食べたい」

「………」


今まで自分から欲しがったりしなかったから、びっくりして固まる俺に微妙な、本当にわずかだが笑った素振りをみせた。


「そうか」


頭を撫でてやると、目を細めた。
相変わらずの無表情だが嫌ではないらしい。
ふっと笑みがもれた。


「パン買って向こうで食べるか、クオン」






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