12

 
覗き込めばそこには自分が映った。
足先を少し動かせば揺れる自分 。

パタパタと当たる音に、人が歩く度にバシャバシャと弾ける水音。


「楽しいか?」

「うん」


無表情だが楽しそうな雰囲気が出てる。


「雨、…外に出るの初めて」


今まではクオンの分の雨着とかなく、外に出なかったのだが、最近は雨が続くから買ったのだ。

傘に雨合羽、長靴なんかも買ったのは良かった。
クオンはさっきから落ち着かなく歩き回っている。

音が楽しいらしい。


そう言えばクオンは『雨上がりの空』とかも見たことがない気がする。
なんとなく勘だがもう少ししたら雨が上がる気がする。


「クオン、ゆっくり帰えろうか」

「?」

「もしかしたら虹がでるかもしれない」


これもフィンシアの勘だが。
だがクオンはその言葉に目が輝いている。


「大きい?」

「そりゃな。空にかかるから大きい」

「ジョウロと違う?」


前にクオンに虹が見たいと言われ、ジョウロで虹を作ったことがあった。

その時のは小さいが、それはそれで良かった。


「また違うな。雨が上がった時にしか見れない特別なやつだ」

「……本当?楽しみ」


雨が上がるまで、あと少し。


 

[ 12/15 ]

[*prev] [next#]
[mokuji] [list]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -