「ここは?」


クオンの目の前には本がずらりと並んでいる。


「図書館だ。歴史やらなんやらが本になってここにある」

フィンシアが一冊手にとってぱらぱらとめくってみせた。
ずっしりと並ぶ文字の列。
子供が読むには難しい。

「………」

「お前にはまだ早いか」


そう言って棚に戻そうとした腕をクオンが掴んだ。


「どうした?」

「それ、読みたい」

「これを?」


フィンシアが聞けばクオンは小さく頷いた。
手に持ってるのはけっこう厚い歴史書だ。
大人でも読書家じゃないと読まないような本だ。

「文字は読めるのか?」

「少し読める。でも書けない」


そういえば簡単な文字は読めていたのを思い出す。
花という字を知っていたのに、実際に花という事は知らなかったというのは何回かあった。
どうやらクオンは本は好きな方らしい。

だからといってこんな難しいモノはは早いような気がする。


「これは難しい。もう少し字を知ってからだから…」


フィンシアは本を戻し、児童書の方へとクオンを連れて一冊の本を渡した。
内容は絵と一緒に文字が書いてある本。
いわゆる子供用のお勉強の本だ


「まずはこれからだ」


クオンはその本をめくると。


「みず…。き…。とり…」


文字を読み上げながらページ次々とめくっていく。
あまりに早いスピードで読んでいくクオンに驚きながら見ていると、パタンと閉じた。


「……全部、読めたかのか?」

「読めた」


頷くクオンにフィンシアは次の本を渡した。
さっきのシリーズ本だ。 受け取るとまたさっきと同じように読んでいく。

その様子を見ているうちに眠ってしまったらしく、目を覚ませばまだ本を読んでいるクオンがいた。
さっきと違うのは机に置いてある本の量があきらかに増えている。
しかも所々、付箋らしきものまで。


「…これは買ってやらなきゃダメか?」


そのあと、読めなかった字を教えたりとで閉館まで居座ってしまった二人だった。

 

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