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「今日も来ないね」
「そうですね」
彼から聞いた"約束”
…それは大切な人との大切な約束だった
『なんで毎日ここにいるの?』
『人を待ってるんです』
『それは前に聞いた。私が聞きたいのは何でここにいるのかってこと』
『ああ、理由ですか。…約束をしましてね』
『約束…?』
『そうです、”ここで必ずまた会おう”って約束をしまして。とても、とても大切な人と……』
そう言った彼の目は、どこか懐かしさを感じているような目だったのを覚えている。
彼にとってその人は本当に大切な人なんだと思った。
あんな目でその約束をした人のことを思い出していたのだから。
「はぁ、いつまでいるつもりなんだか」
「それはあの人がここに来たらですね」
「それ以外にないの?」
「ないです」
きっぱりと言い切る彼にため息がでる。
「こんなに待ってても来ないのに?」
「ええ、私はここで待っています」
「…もう、……50年もたつのに?」
「はい」
そう言って彼が見せた笑顔は、あの時と全く変わらないモノだった。
私と彼が出会ったのはもう5年前。
だけど彼は変わらない… 私が知るずっと前から変わっていない。
彼の時が止まって、もう50年。
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