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「あんた、いつまでそこに居るつもり?」
「さあ…、いつまででしょうね」
そう言うと男は私を見上げてにっこりと笑った。
大きな木の所にいつからだろうか…、あの男が座っているのを見かけたのは。
「毎日毎日、ホントに飽きないわね」
「ん〜、まぁこれが日課ですから」
そうやって笑う彼。
そんな彼に軽くため息をはく。
「そんな来るかもわからない人待ってたってしょうがないじゃん」
「あはは、キツイこと言いますね」
「だって本当のことじゃん」
まぁ、ねと彼は微笑んだ。
いつもこの人は優しく微笑む。
そういう性格なんだろう。
いつもいつも、優しげな笑みを見せる。
でも今の彼は顔を少しだけ伏せ、少しだけ悲しそうな顔をしてぽつりと呟やいた。
「だって”約束”しましたから」
− ねぇ あんたなんでこんな所にいるの?
− えっ?私ですか?
− 他に誰がいるって
− えっと 私は…… 私は人を待っているのです
あの時もそう言って微笑んだ。
その時も優しかった。
そんな彼の微笑みは何故か温かくて、私は彼の隣に一緒に座る。
いつからだろう…、彼と一緒に座るようになったのは…
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