3
すやすやと静かに眠るロミオ。
仮面をしていてもすぐわかった。
仮面を外して頭を撫でる。
「ごめんね、約束守れなくて。あなたと飲むお茶はおいしかったし、幸せな気分になれた。楽しい時間をありがとう」
そう言い残すと、玄関へ向かった。
振り返り、一言だけ呟く。
「いってきます」
町の終わりが近づいてきた。
ここから先を行けば私は町を出ることになる。
別に寂しくわない。
新しい世界が私を待っているのだから。
「どこ行くのさ」
急に声が聞こえてきて、驚いて止まってしまった。
いつも聞いている声。
ゆっくりと横を向く。
「…ロミオ」
「どこ行くの?」
もう一度、同じ事を聞かれた。
私は俯く事しかできない。
せっかく黙って出てきたのに…、意味がなくなってしまう。
私が黙っていると、ロミオはため息をついた。
「はぁ、ジュリエットは世界を見に行きたいんでしょ?」
「え?なんで…」
「なんでわかったかって?言ったでしょ、僕にジュリエットの事がわからないわけないじゃないかって」
にっこりと笑うロミオ。
ああ、この人はどこまで私の心を嬉しさでいっぱいにしてくれるのだろうか。
涙が流れてしまいそうになる。
自然に私も微笑む。
「よし、それじゃ行こうか」
「…え?」
ロミオの言葉に驚いて、じっとロミオ見つめる。
いつの間に用意していたのか、大きめの荷物を持っていた。
「ロミオ、その荷物」
「ん?旅に持ってく荷物。前から用意してたんだ。いつジュリエットが出ていくかわからないからね」
「でもパーティー会場で寝てたんじゃないの?」
「あれは寝たふりだよ。おかげでうれしい言葉が聞けた」
照れたように笑う。
私も恥ずかしくて、でもロミオにつられて微笑んむ。
「ジュリエットが嫌だと言っても僕はついていくから」
新たに始まった日。
私の隣には、…微笑むあなた。
『脱出した日々、変わらぬ風景』 end
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