2
そう言うと、慌てたように玄関へと走っていく。
あんなに慌てなくてもいいのに、と思いながら私はお茶の用意をしにキッチンへと向かう。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
ロミオの目の前にお茶を出し、私も向かい側へと座る。
テラスに出したテーブルと椅子。
ちょうど昼下がりの気持ちの良い天気。
「ねぇ、ジュリエット。今夜の仮面パーティーに出るでしょ?」
「まぁ、とりあえずはね」
そう、今夜は貴族達が集まってみんなでダンスパーティーをする。
正直に言って面倒くさいというのが本音。
だけど家が家だから出なくてはいけないということ。
「今夜、一緒に踊ろうよジュリエット」
「ん〜、私だってわかったらね」
「僕にジュリエットがわからないわけないじゃないか!必ず見つけだすよ」
にっこりと満面の笑みで断言された。
眩しいくらいの笑顔。
私も微笑み返す。
もう、見れないあなたの笑顔。
こんなふうに一緒にお茶を飲むことも。
このなんでもない日常も…今日で終わりだから。
「ありがとう、神父様」
「いや、…でも本当に大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫です」
私の周りにはみんな倒れてる。
もちろん死んでるわけじゃなくて、寝てるだけ。
そう、私は今夜旅に出ることにした。
こんなテラスから見える景色じゃなくて、もっと違う世界を見たくて。
普通に出ていかないのは親が絶対に止めのもあるけど、家出がバレれば一生外に出してもらえないだろう。
あの人達はそういう危ない人達だからね。
「両親には私からちゃんと言っておくよ」
「ありがとうございます」
「いつでも戻っておいで、ジュリエットさん。あなたの故郷はここなのだから」
「はい、わかりました。では」
私は神父様にお辞儀をすると、荷物を持った。
玄関に向かう途中にちょっと寄り道。
[ 2/15 ][*prev] [next#]
[list]