そう言うと、慌てたように玄関へと走っていく。
あんなに慌てなくてもいいのに、と思いながら私はお茶の用意をしにキッチンへと向かう。






「はい、どうぞ」

「ありがとう」


ロミオの目の前にお茶を出し、私も向かい側へと座る。

テラスに出したテーブルと椅子。
ちょうど昼下がりの気持ちの良い天気。


「ねぇ、ジュリエット。今夜の仮面パーティーに出るでしょ?」

「まぁ、とりあえずはね」


そう、今夜は貴族達が集まってみんなでダンスパーティーをする。
正直に言って面倒くさいというのが本音。
だけど家が家だから出なくてはいけないということ。


「今夜、一緒に踊ろうよジュリエット」

「ん〜、私だってわかったらね」

「僕にジュリエットがわからないわけないじゃないか!必ず見つけだすよ」


にっこりと満面の笑みで断言された。
眩しいくらいの笑顔。
私も微笑み返す。


もう、見れないあなたの笑顔。
こんなふうに一緒にお茶を飲むことも。
このなんでもない日常も…今日で終わりだから。










「ありがとう、神父様」

「いや、…でも本当に大丈夫かい?」

「ええ、大丈夫です」




私の周りにはみんな倒れてる。
もちろん死んでるわけじゃなくて、寝てるだけ。

そう、私は今夜旅に出ることにした。
こんなテラスから見える景色じゃなくて、もっと違う世界を見たくて。

普通に出ていかないのは親が絶対に止めのもあるけど、家出がバレれば一生外に出してもらえないだろう。
あの人達はそういう危ない人達だからね。


「両親には私からちゃんと言っておくよ」

「ありがとうございます」

「いつでも戻っておいで、ジュリエットさん。あなたの故郷はここなのだから」

「はい、わかりました。では」


私は神父様にお辞儀をすると、荷物を持った。
玄関に向かう途中にちょっと寄り道。





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