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「お前は何をやっているんだ?」
「お墓、作ってる」
「それはお前の両親か?」
そう聞けば、首を横に振る。
「知らない」
「知らない奴なのに、墓を作ったのか?」
「この町の人って事は知ってる。だけどそれ以外は知らない」
言っている意味がわからなくて、回りを見渡せば焼けた家が目に入る。
普通の火事ならこんなにはならない。
「山賊か?」
「わからない、ずっと暗い中にいたから」
「ずっと?」
聞き返すと、小さく頷いく。
「ずっと…。小さい時から暗い部屋にいた。ドアが開くのはご飯の時だけ」
自分で開ければいいじゃないか。
そう言いたかったが、足に絡み付いている鎖…、足枷に気付た。
この子は生まれた時からずっと閉じ込められていたんだろう。
暗い中にずっと。
「言葉はわかるのか」
「困るからって、教えてくれた」
「しゃべってたのか?家の奴らと」
「ご飯を持ってきてくれた来た時だけ」
淡々と話しをする二人。
何故、自分はこの子供としゃべっているのだろう。
こんな所にいる子なんて無視をして、去ってしまえばいいのに。
「窓があったから、空の色で朝か夜かがわかった。外からの光で本とか読んで、毎日をすごしてた」
その子はそう言うと、言葉を切って空を見上げる。
その顔は伸びきった髪で隠れてしまってよく見えないが、少し悲しそうに見える気がする。
「でも、…それももうできないんだ」
ぽつりと呟いた言葉、悲しく辺りに響いた。
『全て、失くなってしまったから』
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