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「あの男の子のピーター・パンの話があったから、私は元気になれたんだ」
「ふ〜ん」
「でも、あの後気づいたんだけど、私あの男の子の名前とか聞いてなかったなぁって。それに、あんなに元気な子がなんで病院にいたんだろ…」
「会いたい?」
「うん、会いたい。会ってお礼が言いたいし、『私はこんなに元気にやってます』って言いたい」
突然ふはっと息を吐いて笑い始めた飛田君がいた。
我慢しているようだけど…肩が震えてる。
「人が真面目に話してるのに」
「ごめん、ごめん」
謝りながら笑い続ける飛田君。
しばらくして、一通り笑い終わったのかやっと止まった。
「ちゃんと元気な姿見てるから」
「え?」
「あの時は母さんのお見舞いに来てたんだ」
「お見舞い?なんで飛田君が?」
ほら、と目の前にだされたのは星のキーホルダ。
でもその星は半分しかないキーホルダで。
「もしかして…」
私はずっとポケットに入れてあったキーホルダを取り出した。
半分の星のキーホルダ、それを飛田君は私の手からキーホルダをとると、半分の星を一つにした。
「あの時の男の子?」
「そうだよ、ユミ。約束ちゃんと守っただろ?」
はい、私の手に戻されたのは一つになった星のキーホルダ。
「ユミは鈍いね。俺は会ったときからわかったのに、ユミは全然気づかないんだね」
「なんで言ってくれなかったの!」
「いつ気づくかなって思って。でもあんな風に話されたら、あはは」
また笑い始めた飛田君に、私はふんっとそっぽを向いた。
それを見てさらに飛田君が笑う。
そっぽを向いてしまったけど、だけど…これだけは言いたいんだ。
『君が唄うもの、僕が知っている唄』 end
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