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「さて、アオギ。お前は戦闘が好きなようだが、仕事上では『素早く、確実に、痕跡を残すな』が基本だ。わかるな?」
 黒いレザーのオフィスチェアに自身の体を預けるリザ。
「わかってるよー」
「じゃあ初仕事だ。今回はイヅチとペアを組むこと。依頼内容はこれだ。目を通しておけ」
 そう言って机の中央に置かれていた数種類のクリアファイルのうちから1つを手に取りイヅチに渡す。
「捕獲、引き渡しですか」
「そうだ。決して殺すんじゃないぞ」
「えーっ! それは自信ないよう」
 口を尖らせてリザの机をポンポンと両手で叩くアオギに、リザはデコピンを喰らわせた。
「文句言うな。仕事だ。自信がないならペアの奴に頼って依頼回数こなして自信つけろ。お前一人でやるもんじゃないだろ」
「……はあーい」
 あからさまに声のトーンを低くしたアオギは、不満げな返事をするとイヅチを見上げた。
「大丈夫です、私がフォローしますから。まずは仕事に慣れることですよ」
「はあーい!」
 優しい笑みを浮かべ優しい口調で優しい言葉を発し優しくアオギの頭を撫でるイヅチに、アオギの不満は何処かへ飛んで行ったようで瞬く間に上機嫌だ。
「現金なやつめ」
 舌打ち混じりにそう呟くと、苦笑いをして机に頬杖をつくリザ。
「じゃあ仕事行って来い。話は終わりだ」
 ひらひらと片手を振って二人を送りだす。
「では、行ってきます」
「行ってきまーすっ」
 イヅチのあとに部屋を出ようとしたアオギを、リザは呼び止めた。
「アオギ、もし何か思い出したら報告するように」
「はーい」
「能力のことも分かったことがあれば報告だ」
「はーい」
「仕事はしばらく『捕獲』『保護』『譲渡』を任せるからな」
「はー……ええっ!? いやだ! しょぼいー!!」
 流れで承諾することを目論んでいたリザだが、どうやらアオギにその手は通じず本日2度目の舌打ちを繰り出す。
「しょぼい言うなこれも立派な仕事だ。これが出来るようになったら重要な依頼も任せるからな」
「しょうがないなあ、わかったよう」
「お前……一応私はお前等の上司だからな? あまり調子に乗るなよ」
「はーい!」
 眉根をぴくぴくと動かし怒りをあらわにするリザに、これ以上話を長引かせたくないと咄嗟に思ったアオギは素直に返事をしてそそくさと部屋を出る。

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