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太陽が昇り始めた頃、いつも通り目を覚ましたイヅチは髪を結うと台所へ向かった。
「おはよう、ございます」
部屋を出たところで、隣の部屋を使っているシグラに声をかけられた。
「ああ、シグラ。おはようございます。朝食の用意ですか? お手伝いしますよ」
「ありがとう、ございます」
二人が居間を通り抜けようと襖を開けると、そこには行儀よく座っているアオギの姿。
「アオギ、もう起きてたんですか。随分と早いですね」
吃驚するイヅチとシグラに視線を移したアオギの表情はキラキラと輝いていて。
「今日から僕もEMPに行けるんでしょ!? 嬉しくてうれしくて眠れなかったんだあ」
ふんふんっと鼻を鳴らして興奮したように騒ぐアオギに、シグラは首を傾げた。
「えっ、ずっと、起きてた、の?」
「ちょっとだけ寝たよー」
ここに来て3年経った今でも、アオギは未だにイヅチ以外にあまり心を開いていない。
「そっか」
それだけ言うと、シグラは袖をまくりながらのそのそと台所へと入って行った。
「アオギ、まだ彼等には慣れないですか」
その光景を眺めながらイヅチは口を開く。
「僕はイヅチがいればそれでいいよ?」
「…………」
何を言っても無駄だ、と理解したイヅチはもうこれ以上問うことはなく、シグラを追って台所へと姿を消した。
なぜそんな質問をされたのかよく分かっていないアオギは、イヅチの背中を見つめて首を傾げた。
「ち、遅刻するー!! ごめん、私ご飯いらない! もう行かないと!!」
ドタドタと2階からダッシュで階段を下りてくるレセは慌てた様子で玄関へと向かう。
「まだいつもの出る時間ではないですよ!?」
大声で声をかけたのはイヅチ。
けれどレセは振り向きはせず靴を履きながら叫ぶ。
「今日は早朝テストなんだよ! 行ってきます!」
嵐が去ったようだった。
「まったく。レセはいつも騒がしいな。もっと早く起きればいいものを」
「遅刻魔なんだから」
「仕方ないよ」
この騒々しさで目が覚めたらしいここの住人が続々と起き出してくる。
「リザ、キリカとセリカも。ちょうど良かったです。朝食にしましょう」
「「じゃあシュラさん呼んでくるね」」
たった今下りてきた階段を、双子は欠伸をしながらシュラの部屋がある2階へと再び上って行く。
「いただきます」
レセ以外の全員が揃ったところで手を合わせて食前の挨拶をする。
「シュラ。お前、今日大学は?」
ふとリザが思い出したように質問する。
「あー、今日は授業何も取ってないんで休みっす。だから朝からEMPに行きますよ」
「そうか」
自分で聞いておきながらさほど興味がなさそうに頷くリザ。
シュラはそんなリザを気にも留めず箸をすすめる。
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