07


――3年後。

「イヅチー! 見て見て! イヅチとお揃い!」
 バタバタとイヅチに駆け寄るアオギは、イヅチの目の前で腕を広げて一回転して見せた。
 甚平がモチーフの白を基調とした和装。帯は『アオギ』にちなんで青色を使い、ズボンは動きやすいように七分丈で膝下で固定されるように裾にはゴムが縫われていた。
「和服ですね。似合ってますよ、アオギ」
「えへへー、やったあ! シグラが作ってくれたんだー!」
「へえ、シグラが。あの子は本当になんでもできますね」
「シグラすごいね!」
 イヅチのような和服が着けたいと前々から言っていたアオギの願いが叶えられ、アオギのテンションはこれまでにないほど上昇していた。
「あれ? その短刀……アオギがここに来たときから持ってた物ですよね?」
 腰に差してある短刀を眺めるイヅチに、アオギは首を傾げた。
「そうだけど……何かは分かんないよ、僕」
「やっぱりこれも覚えてないですか。使った痕跡がないので、たぶんお守りとかですかね」
 それを聞いたアオギはパアッと表情が明るくなった。
「お守り! 僕のお守り!」
「そうですね。大事にしないといけませんよ?」
「うん!」
 大発見をした子どものように目をキラキラと輝かせて大きく頷くアオギに、イヅチは優しく微笑んだ。

「そろそろEMPに行かないといけないですね」
「えー、もう行くの? まだ時間あるでしょー?」
 仕事は午後からだというのに、まだ朝の9時。
 それなのにもう行くというイヅチに、アオギは駄々をこねる。
「依頼遂行の前に作戦会議がありますからね。いろいろ決め事があるんですよ。アオギはお留守番お願いしますね」
 アオギの頭を優しく撫でながら微笑むイヅチ。
 口を尖らせ、嫌々ながらもアオギは頷いた。
「はーい。行ってらっしゃーい。早く帰ってきてね?」
「仕事が終わったらすぐ帰ってきますね。その間、留守をお願いします。行ってきます」
 手を振ってイヅチを見送ると、家にはアオギ以外誰もいなくなってしまった。
「一人ぼっちー。何しようかなー」
 リザはもちろんEMPへ。レセ、シュラ、キリカとセリカは学校、そしていつも引きこもっているシグラも珍しくEMPへ向かったのだ。
 訓練は組織の施設を借りてイヅチと共に行うため、今日はお休みだ。大人しく留守番を命じられた。
 何もすることがないアオギは、太陽の光が当たっている縁側に寝ころんだ。
「あったかーい」
 ぽかぽかと気持ちのいい温かさに包まれ、うとうとし始めたアオギは、ついに眠りに落ちてしまった。

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