だって振り向いてほしい


ねぇねぇ。
君はいつになったら、君から接してくれるの?



「剣城!ちょっといいか?」

「何ですか、キャプテン」

「次の試合の時、どう攻めるかフォワードと戦略の打ち合わせをしたいんだが」

「解りました。すぐ行きます」


しょうがないよ。
いつだって忙しそうなんだもん。

見てても、振り向いてもらえない。
それがちょっと寂しい。
…ううん、ちょっとじゃない。
ここんとこ、ロクに話してないし、試合相手は段々と強くなるから、剣城はキャプテンのとこにすぐ行っちゃう。

そんなことでキャプテンに、嫉妬してるんだよ。
こうみえてもおれ、嫉妬するんだからね。
君はそれを知らない。


「はぁ…」

「どうしたの?天馬」

「あ、葵。ううん、何でもない。でもちょっと疲れてるのかも」

「ベンチに行って休んでなよ。はい、ドリンク」

「ありがと」


剣城のこと考えすぎちゃって、疲れちゃったよ。
葵から貰ったスポーツドリンクを飲むと、スッと支えが取れた気がした。

…話したい。
少しじゃ物足りないよ。
そんな我が儘は、心の内に秘めておいてるのに、溢れてくる。

つるぎーって。
いっそ叫んでしまいたい。
うわあああと泣き叫ぶように、俺は練習の休憩中に屋上へ行ってしまった。


壁にもたれかかって、ズルズルと腰を下ろしていく。
ぺたんと床に到着すると同時に、溜め息が出た。


「つるぎー…。って、呼んでも来ないよね…」

「ここに居たか」

「えぇっ!?剣城!?」

「お前がここに走ってくのを見たんだよ。練習に戻んぞ」

「う、うん…」


うん、そうだよね。
剣城がおれに会いに来るわけがない。
会いたいって思うのは、おれだけ。


「…天馬」

「!つるぎっ…」

「帰ったらメールしろ」

「う、うん!」


珍しい。
剣城がメールしてもいいって言うなんて!(正確にはちょっと違うけど)

嬉しいな。

くすくす笑えば君は真っ赤になった。
また、屋上に来ようかな。

だってそしたら、君は来てくれるもんね。





(剣城は判りやすいなー)
(自分で言っておきながら照れるし)





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