そんな貴方は一枚上手


最近誰かに見られている気がしてならない。
振り返っても誰もいないし、辺りを見回しても人気は無い。

今日みたいに遅刻して来た日でも、だ。
今猫被んのも意味ないか、と思ったその時、丁度終わりだろうチャイムが鳴った。

――その瞬間、ぞわりと鳥肌がたった。
振り返っても誰もいない。
右を見ても左を見ても、誰もいない。
誰が俺みたいなのをストーカーすんだよ。


「かーりーやっ」

「ぅわっ!き、霧野先輩!?」


どっから湧いて出て来たこの人。
ぬっ、といきなり後ろから出て来たぞ。
ピンクの髪、といったら絶対この人と判るのに、今は全く気付かなかった。

…あれ、少しもやっとする…。


「……先輩。もしかしてザ・ミスト使いました?」

「違う。ディープミストだ」

「どの道使ったんですね。なんで使う必要あったんです?」

「あぁ。お前に気付かれない為だ」


もしかして今までの視線は、先輩?
思い返せば今まで湿り気があったような…。
それにザ・ミストかディープミストを使えば辺りは見えにくい。
見えにくいことは何度もあった。

なんでストーカーするんですか、先輩!
呆れた顔で見ていると、ひょんひょんとツインテールがひとりでに動き出した。
誰か言ってたな、勝手に動くって。


「ていうか、なんで嬉しそうなんですか」

「え?」


きょとん。
いやきょとんとしないでくださいよ。
ちょっと嫌そうな顔をすると、何かを察したのか申し訳なさそうな顔に変化した。
…俺が悪いみたいじゃん。

どうして霧野先輩が、いつも俺をみてるのか知りたいだけなんだけど。


「狩屋の百面相…見てて面白いからって言ったら怒ると思って…」

「先輩、それただの変態ですよ」

「だってお前、部活の時は楽しそうで、クラスん中は笑って猫被って、独りだと寂しそう」


よく見てたんだな。
同じディフェンスだから位置が近い。
だからよく見ているとか言われても別に驚きはしなかった。
寧ろ納得はしてしまうかも。

でも、それ、だけだったら。

お日さま園に入った時から独りだったし、独りは慣れてた。
なのに先輩は寂しそうだなんて言う。
なんでだよ。

なんで、分かっちまったんだ。


「…確かにサッカーやってる時は楽しいですよ。好きですし。でも独りは慣れてるので寂しくもなんともないですよ」

「嘘だな。四六時中見てた俺には判るぞ。確かにサッカーは好きだから楽しいのは解る。でも絶対にそれだけじゃない。理解出来る人が出来たから、一緒にやってくのが楽しいんだろ?」

「…ッ…」


どうしてこの人は。
どうして霧野先輩はわかるんだ。
四六時中見てたからって、保護者じゃあるまいし。

でも当たってる。
その通りだ。

鋭いその目は、俺を見透かしていた。
くそっ、何か悔しいな。


「そうですよその通りですよ゙ッ!?」

「そうなんじゃないか!ったく、最初から言えばいいものを!」


う、うわっ、うわっ!
こんなとこで普通抱き締めるか!
つーか髪ぐしゃぐしゃするな!

でもちょっと嬉しかった。





(「もう離れてください!」)
(「えー?」)
(「ハンターズネット!」)
(「かりっ、狩屋ぁぁあ!!」)





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