ふんわり爽やか笑顔ボーイ


ふぅ…と溜め息を一つ。

サッカー部が漸(ようや)く落ち着いたからだ。
廃部騒動が終わって、地区予選は突破。
良かった良かった。


「あっ、天馬くーん!」

「榎本、どうしたの?」

「これ、地区予選抜けたお祝品!」

「わあっ、クッキー!ありがとう!」


私は彼の笑顔が大好きだ。

柔らかい、ふんわりとした笑顔。
天馬くん。
彼は絶対に鈍感だ。
だから私の好意には絶対気付かない。
いくら私が周りからも判るだろうアプローチをしているというのに、彼は全く気付かない。

…何を考えてるんだろう。

一回だけ“もしかしたら裏があるんじゃ…!”と思ったことがあったけど、それは直ぐに打ちのめされた。
だって、サッカーをやってる天馬くんが純粋すぎるもの。


「信助ー!これ榎本が作ってくれたクッキーなんだけど、信助も食べる?」

「えっ、いいの?」

「いいよ」

「ありがとう榎本さん!」


…他人にあげるのは別にいいんだけどね。
うん、それが天馬くんだもの。

優しいのが、天馬くん。
少なくとも私が知ってる天馬くんは、優しくて、いつも笑顔で、諦めない、心の強い人。
粘り強いの。
そんなところに惹かれた。
でも気付かない。
…それも彼の一つだけど。


葵ちゃんが羨ましい。
いつも仲良くしてるし、マネージャーだから、幼なじみというのもあって、よく一緒にいるのを見かける。
せめてマネージャーになっとけばよかったなぁ。
今更、だけど。


あ、天馬くんと言えば。
この学校での女番丁…水鳥先輩に気に入られてるらしい。
水鳥先輩は勇ましい人で、私とは正反対だけど、すごく良い人。
でもそんな人に気に入られてる天馬くんの方が、もっとすごい。
きっと根気を買われたんだなぁ。


「榎本!」

「なっ、何?」

「これ、落としたよ」

「あ、ありがとう」


落としたものも拾ってくれるのは日本人ならでは、だけど、彼は少し違った。


「次落としたらダメだよ?」

「うん。ありがとう」


笑って注意をしてくれる。
普通はやらないことを、彼はする。

そこもまた、惹かれたところなんだ。





(いっそ好きだと言ってしまいたい)
(でも絶対勘違いされるに違いない)





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