一番最初に信じた人へのプレゼント


神童達が戦国時代から帰って来た。今までサッカーに対して嫌悪感を抱いていた気がするが、そんなものが無くなった。今はもう、晴れやかな気持ちでいる。俺もまだまだだな、と思う。

そう、全然まだまだ。


「刹那ブースト!!」


神童はアームドも、ミキシマックスも成功させていた。単に凄いと思ったんだ。きっと苦難を乗り越えて成功させたんだって、顔を見れば判るしな。
プロトコルオメガと戦うには、少しでも戦力が必要だ。神童の事は、誰もが喜ばしい出来事。俺だって嬉しい。嬉しい、のに。

(…悔しい)

お前と練習して、登り詰めた一軍。いつだって一緒に登ってきた。挫けた時だって何度かあったけど、互いに引っ張りあってきた。
だがもう引っ張られない。差がつきすぎたんだ。俺は今、お前の背中しか見えない。ずっと、隣に居たのに。

…くそっ。俺は今まで何をしていたんだ…!


「霧野せーんぱい」

「っ狩屋!」

「そんな辛気臭い顔しないでくださいよー。シケた面してると、辺りがジメジメしてくるのでやめてください」

「…そんな顔はしていない」

「してなかったら言いませんよ」


…コイツ。慣れた今でも悪態をつくってどういうひねくれた性格なんだ。
まあ…だがなんだ。そんな辛気臭い顔だなんて周りから見なきゃ判らないことだし、それほど落ち込んでるって判っちまったしな。
多分、狩屋は気付いてる。


「サンキュ」

「何ですか突然。気持ち悪い」

「……だけど今は放っておいてくれ。一人に、なりたい」

「あっ、先輩…。ったくもう…」


悪い。気付いてるからこそ、心配してくれてるんだよな。ありがとう。でも、ごめん。気持ちが整理されないまま話しても、お前を傷付けるだけだ。



†ー†ー†



次の日、狩屋に神童のことについてズハズバ言われた。そんなことはない、と言い返しはしたが、図星だった。
そしてフランスへと向かう11人が発表された。確実に力をつけるためにも、行きたい。それなのに、俺は入っていなかった。納得出来なくて思わず大介さんに“俺も行かせてください”と言ってしまった。もしかしたら迷惑かもしれない。だけど…!



「すみませーん。俺今日朝からお腹痛くて…。いてて…。今回は出られそうにないので、俺の代わりに霧野先輩を入れてほしいんですけど…」

「狩屋…」

「…ふむ。まあいいだろう」

「あ、ありがとうございます!」



持ち前の嘘で、狩屋のお陰で俺は行けることになった。腹を擦ってもばればれだけどな。嬉しくって、出発前に狩屋を呼び出した。
渋々と来てくれたが、どこか顔は緩んでる。


「ありがとな、狩屋」

「なんのことですー?」

「腹が痛いだなんて嘘ついてまで俺を入れてくれたじゃないか。感謝してる」

「…べっつにー。ジェラシー抱いてうだうだしてる人をフランスに行ってまで思い出したくないだけですよ」

「お前それを心配って言うんだからな。ともかく本当にありがとう。行ってくるよ」

「精々足引っ張らないで戦ってきてくださいね。…いってらっしゃーい」

「ああ」


素直になれば可愛いもんなんだけどな。ま、素直にならないのが狩屋なんだけど。

いってきます。次会った時は力をつけて胸張ってと思うぞ。堂々として帰ってきてやる。
だから、心配は要らないからな。





(いつも見てるなんて)
(思ってなかったけど)





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