それは絶対に笑顔じゃない
「アイツやだ。無理」
「…また剣城君のこと?」
「うわあああ名前出すなっちゅーの!吐き気がする!」
私は最近サッカー部を潰しに来たとかいう変な服装をした奴が嫌いだ。
ちくしょう、サッカー部を見てマネージャーやろうかなとか思ってたら潰すだと!?
ムカつく。やる気無くした。
はぁ…あのクソもみあげ…いつか切ってしまいたい!
「でも万能坂中との試合で、オウンゴールしたけど、剣城君自身が点を取り戻したらしいよ」
「…は?」
「さらに帝国戦では途中参加して試合に勝っちゃうしねー」
「それどこの情報!?」
「松風君。花菜、剣城君がサッカー部に関与してからサッカー部の事全然知らないんだね。花菜の情報は古いよー」
私の最近が最近じゃない…だと!?
しかもいつ私の友人は松風天馬と仲良くなってたんだああああああ!!
…昭和生まれじゃないけど、昭和に取り残された人みたいだ…。
「今じゃちゃんと練習にも出てるし、まぁサッカー部にとっては結果オーライだったんじゃない?」
「…うへぇ」
マジすか…。
嗚呼、私の青春は剣城京介によって打ち砕かれたというのに…。
ええい、こーなったら今からでも遅くはない!
マネージャー、やるわ!
やってやろうじゃない!
「音無センセー!」
「花菜ちゃっ…って速ッ!!」
女は度胸!
何があろうとぶち壊すのみ!
こうなりゃマネージャーになって地味ーに嫌がらせしてやる!
廊下は走るなというルールを無視して走る。
今思えば、守っておけばよかった。
「いたっ!すっ、すみません!」
「大丈夫か?危ないから廊下は走るなよ」
「はっ、はい!」
うわわわわわわ神童先輩にぶつかっちゃったよ!
あの神童先輩に!
いくらサッカー部の情報に疎くても、神童先輩には疎くない!
キャプテン様様なんだから!
…って、え?
見間違い?
いつも隣に居るのは霧野先輩なのに―――どうして剣城がここに!?
「つっ、剣城京介…」
「あ?誰だお前」
「あんたに用なんかあるかァア!」
「いって!何すんだテメェ!」
「こここ怖くないもん!」
やべぇぇぇ!!
勢い任せでもみあげ引っ張っちゃったよぉぉぉぉ!!
つり目が更につり目になってるよぉぉぉぉ!!
「お前、ちょっとこっち来い」
「ぎゃああああ!!死ぬのにはまだ早いいいい!!」
校舎裏に連れてこられた私は、脅え度MAX以上。
怖くないもんとか言いつつ、怖いです。マジで。
くそ、もみあげ切りたい。
そんなもみあげ無かったらこんなことには多分ならなかった。
「お前、名前は?」
「…榎本、花菜…(教えたくなかったけど教えなかったら殺される…!)」
「ふぅん」
ニヤリと笑う不適な笑み。
何か企んでやがる!!
逃げたい。
超逃げたい。
何でこんなときに誰も居ないの!?
「榎本、お前で遊んでやるよ」
それは絶対に笑顔じゃない
(「…は?」)
(遊ぶ?私を?)
(わけわからん!!)
(新しいもん)
(しばらく退屈しねーな)
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