これが最高のバッドエンド


馬鹿。アイツほんっとーに馬鹿。あのツンデレ。何が『美術で課題出したら直ぐ返されました』だ。ネーミングセンスが無ければ美術センスも無いんだな、アイツ。それで手伝ってとかない。提出期限明日っていうのが、なんとも言えない。何でギリギリになるまでやらなかったんだよ。


「はぁ…」

「まあ…狩屋も頑張ってたんだろう」

「頑張ったのは一瞬だと思うぞ」


神童に慰められても、全く元気が出ない。運良く今日が日曜日で、部活だけだったのがラッキーだ。授業もあるとなると、終わる時間がかなり遅くなるからな。着替え終わって神童と(愚痴を)話していたが、当の本人がまだ着替えも済んでいないというのはどうなんだろうか。こっちはもう帰れるのに。


「あ、天馬。狩屋がどこにいるか知ってるか?」

「えっ、狩屋?てっきりもう帰宅したのかと思ってました」


あの野郎…後でシバく。頼んでおいて何様だアイツは!俺先輩だぞ?敬えよ。


「狩屋なら校舎に入っていきましたよ」

「は?」

「『道具道具』とか言いながら走って行きました」

「狩屋あああああ!!」


剣城ありがとう。お前が居なかったら帰ってるとこだった。ていうか何で昨日の内に道具持って帰らないんだよ。馬鹿だろ本当。
俺は全速力で狩屋のクラスへと向かった。試合で走るよりも速い気がする。


「あっ、霧野先輩」

「この野郎…。お前の家でやるんだから、道具持ち帰るならさっさと持ち帰っとけよ」

「はーい」

「謝罪されてる気がしねぇ…」


ゆっくり歩く狩屋に苛つきながらも、少しだけ呆れる自分がいる。

“何で安請け合いしてしまったのか”と。

特にお礼に何かあげるとも言われてはいないし(こう思うなんて図々しいけど)、手伝ってやるってのに感謝、いや敬意すら無い。ほんっとにどういうつもりだよ、こいつは。


狩屋の家に向かっている途中、狩屋が妙なことを呟いた。


「…で、どーん…だから俺が…」

「狩屋?」

「な、んですか?先輩」

「どうかしたか?」

「いえ。どうもしませんよ」


いや、おかしい。コイツがサッカー以上に真剣な顔をするなんて初めてだ。しかもずっと前を見て、身構えるような姿勢をしている。そうだな、例えるなら―――


「恨まないでくださいね、先輩」

「…は?」

「ずっと好きです」

「なっ……狩、やっ!?」


狩屋に思いっきり公園に突き飛ばされた。コイツ、こんなに力あったのかよと思いつつ、砂埃が少し入ってしまった目を押さえる。
“痛い”と呟く暇が無かった。目の前の出来事に目を逸らしてしまいそうだった。
一瞬何が起きたのか解らなくて、頭の中が真っ白になった。


「か、りや」


横たわる君と、君に乗っかっている電柱。側にはボール。

“ずっと好きです”

その声が最後なんて思わなくて、泣き崩れた。
俺はまだ伝えてない。まだお前に言いたいことがあったのに。まだやりたいことがあったのに。
どうして。
どうしてお前は俺より先に逝ったんだ。
なぁ。
どうして庇った。狩屋。

泣く以外何もせず、ただ俺はその場で悔やんでいた。

××した。
×ろした。
ころした。
殺した。
誰かが狩屋を、殺した。

俺は絶対許さない。





(死ぬまで呪い続けてやる)



お題配布元:確かに恋だった様より




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